houritsuとは?日本の全法令を改正ごとのgit履歴にしたOSSの仕組みと使い方

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houritsuとは?日本の全法令を改正ごとのgit履歴にしたOSSの仕組みと使い方

houritsuは、日本の法令をすべて集め、「いつ・どの法律が・どこまで書き換わったか」を時間順にたどれるようにしたオープンソースです。個人の開発者が公開し、法律の改正文が読みにくいという悩みを、ソフトの「変更履歴」の仕組みで解いた点が、技術系のサイトで読まれています。プログラミングを知らなくても、発想は分かります。

houritsuを一言でいうと?

houritsuは、日本の法令の改正の歴史を「変更履歴」つきで読めるようにするための、公開データ集です。

たとえるなら、WordやGoogleドキュメントの「変更履歴」機能の法律版です。文書を直すと、消した文字と足した文字が色分けで残りますよね。houritsuは、日本の法令すべてについて、それと同じ記録を残しています。

実際には、git(※gitとは、ファイルの変更を一回ずつ記録していく道具。ソフト開発でよく使われます) の履歴として作られています。法律の本文を1つのファイルにして、改正が施行されるたびに1回分の記録を足す仕組みです。

これまでと何が変わるのかを、3点にまとめます。

  • 法律の改正で「どの文言がどう変わったか」を、前後の比較で見られる
  • 1本の改正法が、ほかのどの法律をまとめて書き換えたかが分かる
  • 毎朝自動で更新される(作者の解説記事)

法律の改正は、「第三条中『A』を『B』に改める」という書き換えの指示文で行われます。読んだだけでは、直したあとの姿が頭に浮かびません。houritsuは、その「直したあとの姿」と「直す前との違い」を、最初から見える形にしたものです。

houritsuとは?誰が何のために作ったのか

作者は開発者のKohei Wadaさんです。公開場所は GitHubのリポジトリ(ファイルの置き場)で、解説記事はZennに載っています。

きっかけは「ただの思いつき」だったと、本人が書いています。作者は法律の専門知識がなく、AIを使って知らない分野を調べるのが速くなったので、どこまでできるか試したくなったそうです。国会会議録のデータを眺めていて、「法律をgitで管理したら面白いのでは」と考えたとのことです。

データの元は、政府の法令検索サイト「e-Gov法令検索」が提供する法令データです。それを変換するプログラム(houritsu-builder)は、Rustというプログラミング言語で書かれています。

ChatGPTなどとの違い

ChatGPTのような対話AIは、質問に文章で答えます。houritsuは違います。質問には答えず、法令の本文と改正の記録そのものを、整理して置いてあるだけです。

図書館にたとえると、司書さんに相談するサービスではありません。改正の履歴まで並べて置いてある、よく整理された書庫です。

似た取り組みとの関係

作者の記事によると、ドイツには連邦法をgitで管理している「bundestag/gesetze」があります。日本にも、e-Govの全法令を毎日保存している「elaws-history」があります。ただし後者は、データをそのまま積み重ねているので、改正ごとの履歴としては読めないと作者は述べています。houritsuは、そこを埋めるために作られました。

なぜ話題になっているのか

改正文を「差分」で読める

資料1には、具体例が2つあります。どちらも個人情報保護法のファイルに、改正の履歴をかけたものです。

1つ目は、日本学術会議法の施行です。日本学術会議が国の機関から法人になったことに合わせて、個人情報保護法の別表に1行が足されました。個人情報保護法そのものを直す改正ではなくても、他の法律の改正に巻き込まれて書き換わることが、履歴から分かります。

2つ目は、2026年7月17日の個人情報保護法の改正です。見直しの規定が、「施行後三年ごとに」から「施行後三年を目途として」に変わっていました。改正法の条文から読み取るのは大変ですが、前後を並べれば一目で分かる、と作者は書いています。

反応の広がり

解説記事はZennに載り、はてなブックマークでも取り上げられています。開発者の間で話題になっているのは、法令を「更新され続けるソフトのソースコード」のように扱う発想が新鮮だからだと考えられます。ただし、反応の中身までは資料から確認できません。

作者の次の構想

作者は次の案として、houritsuと国会会議録のデータを組み合わせ、「kokkai-cli」のような道具を作ることを挙げています。コミットから、その改正を通した法案と国会での議論までたどれる道具です。ただし「暇なときにやってみようと思います」という段階で、公開済みかどうかは資料からは分かりません。

仕組み・主な特徴は?

1. 改正1回が1つの記録になる

何ができるかというと、特定の法律に手を入れた改正を、新しい順に並べて見られます。

仕組みとしては、1本の改正法が施行されたことが、1コミット(※コミットとは、変更を1回分として記録したもの)に対応します。記録の日付は施行日で、午前0時(日本時間)です(GitHubのREADME)。

2. 法令1つが1ファイルになる

法律・政令・省令など、e-Govにある全法令が入っています。作者の記事の時点では、法令ファイルが8,982個、メインの記録が23,338個でした。

GitHub側の説明では、法令の数は「いまは約9,000」です。数字は毎日変わるので、細かい違いは更新のタイミングの差とみられます。

1つの法令が1つのMarkdown形式のファイルで、題名などの情報(メタデータ)が先頭にまとめて書かれています。表はHTML形式で、結合したセルも残されています。目次は見出しの繰り返しなので省かれています。

3. 改正法の情報と国会の議案がつく

何が分かるかというと、その改正が「どの改正法で」「いつ公布され」「同時にどの法令が書き換わったか」です。

記録に添えられたメッセージに、改正法の番号、公布日、施行日、変更された法令の一覧が入っています。国会で成立した法律には、衆議院サイトの議案ページへのリンクもあります。作者によると、1本の改正法が十数本の法令をまとめて書き換えている例も、このメッセージで分かります。

法案の提出者を示す欄もあります。この欄は作者の追記(2026年11月3日)で加わりました。衆議院の議案情報から取っているため、付くのは1998年ごろ以降の法案です。

4. 毎朝自動で更新され、施行前の改正も見られる

毎朝、e-Govから差分を取ってきて、記録を足しています。公布されたがまだ施行されていない改正は、別の「upcoming」ブランチ(※ブランチとは、記録の流れを分けた枝のこと)に置かれます。

施行日が決まっていない改正は、2117年12月31日という仮の日付で、upcomingの最後に置かれます。これはe-Govが使っている仮置きの日付です(README)。

5. 1つの条文だけの移り変わりも追える

法律全体ではなく、「第十六条」のように特定の条文だけの変遷を追えます。gitの機能の1つを使う方法で、具体的な書き方は「使い方」の節で紹介します。

自分に関係ある?向いている人・向いていない人

結論から言うと、いまのhouritsuは、一般の人がアプリのように使うものではありません。 使うにはgitの操作が必要で、画面から検索できるサービスの案内は資料に見当たりません。

また、普段使っているサービスの裏側に組み込まれていくのかどうかも、資料からは確認できません。作者が述べているのは、データと変換プログラムを公開し、「こういう見方ができると便利、というのがあれば教えてください」と呼びかけているところまでです。

向いている人

  • gitを使い慣れていて、法令の改正を調べたい人
  • 法令のデータを使った分析や、新しい道具づくりに関心のある開発者
  • 法改正が他の法律にどう波及するか、仕組みの面から知りたい人

作者自身も、法律の素人としてこのデータを眺めて「面白かった」と書いています。専門家でなくても楽しめる、という意味では敷居は低めです。

向いていない人

  • 法的な判断や契約のよりどころになる、公式の条文が必要な人(正本は官報です)
  • 2015年より前の改正の経緯を、細かく知りたい人
  • gitを使わず、ボタン操作だけで調べたい人

非エンジニアの方は、まず作者の解説記事で「改正がこう見えるのか」を確かめるだけでも、全体像はつかめます。

使い方・始め方は?

ここからは実際に触ってみたい人向けです。読み飛ばしても全体像は分かります。

入手先は GitHubのリポジトリ です。前提として、gitが使える環境が必要です。以下は、資料に載っている例です。

法律の改正履歴を見る

個人情報保護法のファイルに対して、改正の履歴を並べる例です。

git log laws/act/415/415AC0000000057.md

ファイル名は、e-Govの法令IDです。題名が変わっても同じIDなので、ファイルは追い続けられます。「415」は、公布の元号と年(平成15年)を表す最初の3文字です。

法律を題名から探す

題名は、各ファイルの先頭にある情報の中に入っています。題名で探す例です。

git grep -l '^title: "個人情報の保護に関する法律"' -- laws

1つの条文だけを追う

第十六条から第十七条の手前までの移り変わりを追う例です。

git log -L '/^##*  *第十六条/,/^##*  *第十七条/:laws/act/415/415AC0000000057.md'

READMEによると、この方法は最初に見つかった一致、つまり本文を対象にします。附則の条文を追うときは、その附則の見出しから範囲を始める必要があります。

注意点・現時点で分かっていないことは?

履歴は2015年ごろからで、法律の成立時からではない

e-Govの改正データが2015年ごろから揃うため、それ以前の改正は入っていません。READMEによれば、年あたりの記録数は、それ以前は数百件、2019年以降は約2,000件です。つまり、記録数の推移は、法律の動きだけでなく、e-Govのデータの充実ぶりも映しています。

そのため、約3分の1の法令は、記録が1つしかありません。また、過去の日付に切り替えても、その時点のデータがない法令はファイルが出てきません。READMEの例では、2010年1月1日時点で約2,800法令、現在は約9,000法令です。

「いつからある文言か」は正確に分からない

gitには、各行がいつ書かれたかを示す機能(blame)があります。houritsuでは、データが揃う前からある文は、最も古い記録にまとめて入っています。たとえば刑法は、大半が2016年の記録として表示されます。READMEの言い方では、「その時点までにはすでにあった」と読むのが正しい使い方です。

1970年より前の日付の扱い

gitは1970年より前の日付で記録できません。houritsuには、明治期の法令などで1970年より前に施行された記録が317個あります。最も古いのは、1872年11月9日施行の「改暦ノ布告」です。これらは日付を1970年1月2日に寄せ、本当の施行日を記録の補足情報と、ファイルの先頭の情報に書いています。

記録の識別番号は安定しない

v1.0より前は、履歴が作り直されて強制的に上書きされることがある、とREADMEは警告しています。作者の追記でも、提出者の欄を足した際に履歴を作り直したため、すでに手元にコピーしている人は取り直すよう求められています。特定の改正を指すときは、各ファイルの先頭にある法令IDと改正IDを使うよう、READMEは勧めています。v1.0の時期は、資料からは確認できません。

図表や内容の注意

  • 図や様式は、e-Gov上の添付へのリンクとして入っています。図の約3割は、e-Govに画像がなく、その旨の表示になります
  • 条文の文字は変えていませんが、見出し記号などが加えられています
  • 公式のものではなく、法的な助言でもありません。保証もなく、古い内容や誤りがあり得ます。頼る前にe-Govか官報で確認するよう、READMEが求めています

ライセンスと料金

データはCC BY 4.0、変換プログラムはMITライセンスで公開されています。元のデータはe-Govの法令データで、出典は「e-Gov法令検索」、利用条件はPDL1.0です。出典の表示が必要で、書き方はREADMEの「出典」の節にあります。法令の条文そのものは、著作権法第13条により著作権の対象外だと書かれています。

料金については、資料に記載がありません。

資料からは確認できないこと

  • 一般向けの検索画面やアプリが用意されるのか
  • v1.0がいつ出るのか
  • 国会会議録と連携する道具(kokkai-cliのような構想)が公開されるのか

まとめ

  • houritsuは、日本の全法令を「改正1回=1つの記録」にした、変更履歴つきの公開データです
  • 「どこがどう変わったか」を前後の比較で見られ、1本の改正法が他の法律を巻き込む様子も分かります
  • 作者は個人の開発者で、データはe-Govから毎朝自動で取り込まれています
  • 使うにはgitの操作が必要で、いまのところ一般向けのアプリではありません
  • 履歴は2015年ごろからで、公式の条文ではありません。正本は官報なので、法的な用途では必ず公式の情報で確認してください

よくある質問

プログラミングができなくても houritsu は使えますか?

現時点では、使うには git というソフトの操作が前提です。資料には、ボタンで操作できるアプリや検索サイトの案内はありません。プログラミングをしない人は、まず作者の解説記事で改正の見え方を確かめるのが現実的です。

houritsu は無料で使えますか?

資料に料金の記載はありません。データは CC BY 4.0、変換プログラムは MIT ライセンスで公開されています。使うときは出典の表示が求められます。条件の詳細は GitHub の出典・ライセンスの節で確認してください。

houritsu は ChatGPT のように質問に答えてくれますか?

いいえ。houritsu は法令の本文と改正の履歴をまとめたデータで、質問に答える AI ではありません。作者は、国会での議論まで追える道具を次の構想として挙げていますが、現時点で公開されているとは資料から確認できません。

houritsu の法令文は、公式の条文として使えますか?

使えません。資料は、正本は官報であり、houritsu は公式のものでも法的な助言でもないと明記しています。保証もなく、古い内容や誤りがあり得ます。頼る前に e-Gov か官報で確認するよう求めています。

どのくらい昔の改正まで分かりますか?

履歴は2015年ごろからです。e-Gov の改正データがそのころから揃うためで、それ以前の改正は入っていません。明治期の法令も収録されていますが、2015年以前から続く文は、最初のコミットにまとめて入っています。

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