2026年11月5日(Nov 5, 2026)、AI開発環境「Kiro」の新しいアップデートが公開されました。会話の圧縮(コンパクション)の前後で処理を挟めるHookトリガーが追加され、Workflow Runsの検索なども加わっています。長い作業の制御がしやすくなる内容です。
今回のアップデートの全体像
今回のリリースは、新機能と不具合修正の2本立てです。公式のChangelogに記載されている内容は次のとおりです。
追加された機能
- Pre Compaction / Post Compaction のHookトリガー
- Workflow Runsビューでの検索
- コンパクトなワークフロー実行カード
- サイトにMarkdown形式を要求するWeb取得(web fetch)
- サブエージェント向けの読み取り専用Memoryアクセス
修正された不具合
- 接続が完了していないウィンドウでAgent Focusが止まってしまう問題
- MCPのトークン更新で障害が起き、再サインインが必要になってしまう問題
- 非常に大きなセッションが開けない問題
※Hookとは: 特定のタイミング(トリガー)で自動実行される処理のこと。「ファイル保存時」「会話の圧縮時」など、決まった場面でスクリプトなどを走らせられます。
主要な変更点① Pre / Post Compaction Hook
概要(初心者向け)
AIとの会話が長くなると、古いやり取りを要約して置き換える「コンパクション」が行われます。※コンパクションとは: 長くなった会話履歴を要約にまとめ、コンテキスト(AIが一度に参照できる情報量)を空ける処理です。要約すると細かい情報が抜け落ちることがあります。今回、この要約の「前」と「後」に処理を差し込めるようになりました。
技術的な詳細
Hookエディタの「Compaction Hooks」グループに、新しいトリガーが2つ追加されています。対象は、Kiroが会話を自動でコンパクションするときです。
- Pre Compaction Hook: 要約が書かれる前に実行されます。終了コード2で終了するとコンパクションをキャンセルでき、そのときのエラー出力が理由として表示されます。
- Post Compaction Hook: 要約が古い履歴に置き換わった後に実行されます。出力は会話に追加されるため、要約から漏れた情報をエージェントに保持させられます。
どちらのトリガーもmatcher(対象を絞り込む条件)は指定できません。
※終了コードとは: スクリプトやコマンドが終了するときに返す数値です。今回は「2」が「キャンセル」の合図として使われます。
graph LR
A["会話が長くなる"] --> B["Pre Compaction Hook"]
B --> C["要約を作成"]
C --> D["Post Compaction Hook"]
D --> E["出力が会話に追加"]
| 項目 | Pre Compaction | Post Compaction |
|---|---|---|
| 実行タイミング | 要約が書かれる前 | 要約が古い履歴に置き換わった後 |
| 主な役割 | コンパクションのキャンセル | 要約で抜けた情報の補完 |
| 出力の扱い | 終了コード2のとき、エラー出力が理由として表示 | 会話に追加される |
| matcher | 指定不可 | 指定不可 |
活用例(考え方の一例)
以下は公式情報をもとにした筆者の想定です。実際の動作は環境によって異なる可能性があります。
- Pre側で、作業の途中状態に問題がないか検査し、問題があれば終了コード2でコンパクションを止める。
- Post側で、プロジェクトの重要な決定事項や作業ルールを出力し、要約後も会話に残す。
これにより、長時間の作業で「要約したら大事な前提が消えていた」という事態を減らせると考えられます。
主要な変更点② Workflow Runsと周辺機能の改善
Workflow Runsの検索とコンパクトカード
Workflow Runsビューに検索が加わり、実行カードもコンパクトな表示になりました。実行履歴が増えても、目的の実行を探しやすく、一覧もまとまって見やすくなると考えられます。なお、検索の対象項目や構文など細かな仕様は、資料からは確認できません。
Web取得でMarkdownを要求
Web取得の際に、サイトに対してMarkdown形式を要求するようになりました。※Markdownとは: 見出しやリストを簡単な記号で表せる軽量な文書形式です。HTMLより装飾が少ないため、AIが内容を読み取る用途に向くと一般に言われています。対応サイトでどの程度効果があるかは、現時点では公表されていません。
サブエージェントの読み取り専用Memoryアクセス
サブエージェントが、読み取り専用でMemoryにアクセスできるようになりました。※サブエージェントとは: メインのエージェントから作業の一部を任されて動く補助的なエージェントです。読み取り専用なので、参照はできても書き換えはできません。意図しない上書きを避けつつ、蓄積された情報を活用させやすい設計だと考えられます。Memoryの保存内容などの詳細は、資料からは確認できません。
修正された不具合
| 修正内容 | 以前の状態 |
|---|---|
| Agent Focus | 接続が完了していないウィンドウで停止していた |
| MCPトークン更新 | 更新時の障害で、新たなサインインが必要になっていた |
| 大規模セッション | 非常に大きなセッションが開けなかった |
※MCPとは: Model Context Protocolの略で、AIツールと外部ツール・データをつなぐための共通の仕組みです。外部サービスと連携して使っている人にとって、再サインインを強いられにくくなる点は安心材料です。
影響と展望
コンパクションは長い対話型の開発に欠かせない一方、何が要約で失われるかが見えにくい仕組みでもあります。今回のHookにより、その前後をユーザー側で制御できるようになりました。これはAI開発ツールで「自動処理への介入ポイント」が増えていく流れを示すものと考えられます。
また、読み取り専用Memoryやコンパクションの制御は、複数エージェントで長時間作業する場面で効きそうです。ただし、これらは筆者の見通しであり、実際の効果は利用状況によって変わります。詳しい手順は公式Changelogから確認してください。
まとめ
- Pre / Post Compaction Hookが追加され、会話の圧縮前後に処理を実行できる
- Pre Compaction Hookは終了コード2でコンパクションをキャンセルでき、Post Compaction Hookの出力は会話に追加される
- Workflow Runsの検索、コンパクトな実行カード、Markdownを要求するWeb取得、サブエージェントの読み取り専用Memoryアクセスも追加
- Agent Focusの停止、MCPトークン更新による再サインイン、大規模セッションが開けない問題が修正された