AIを活用した開発支援ツール「Kiro」が、最近、画期的な新機能を多数リリースしました。今回のアップデートは、AIエージェントの能力を飛躍的に向上させ、開発ワークフローをより効率的かつインテリジェントに変革するものです。特に、複雑なタスクの自動化と計画立案の支援に重点が置かれており、初心者からベテランエンジニアまで、すべての開発者にとって見逃せない内容となっています。
主要な変更点:AI開発を次のレベルへ

1. サブエージェント:複雑なタスクを賢く委譲
概要・初心者向け説明:
Kiroの新しい「サブエージェント」機能は、まるでプロジェクトマネージャーが専門家チームに仕事を割り振るように、メインのAIエージェントが複雑なタスクを別の専門AIエージェントに任せられる機能です。これにより、メインエージェントは全体の指揮に集中しつつ、専門的な作業はサブエージェントが自律的に進めてくれます。進捗もリアルタイムで確認できるため、安心して任せられます。
技術的詳細:
サブエージェントは、それぞれが独立したコンテキスト(作業環境や思考状態)を持つことで、並行してタスクを実行できます。これにより、メインエージェントのコンテキストが散漫になるのを防ぎ、より複雑な問題解決を可能にします。デフォルトで汎用的なサブエージェントが提供されるほか、ユーザーは独自の構成を持つサブエージェントを生成し、特定のワークフローに特化させることも可能です。ファイル読み書き、シェルコマンド、MCPツールといったコアツールへのアクセスも許可されており、幅広いタスクに対応します。
専門用語解説:
* コンテキスト(Context)とは: AIが現在の状況や過去のやり取りを理解し、適切な応答や行動を生成するために保持している情報のこと。サブエージェントは独自のコンテキストを持つことで、メインエージェントの思考から独立して作業を進められます。
* MCPツール(Multi-Agent Communication Protocol Tools)とは: 複数のAIエージェントが連携して動作するためのプロトコルやツール群。組織内でのAIエージェントの利用を管理・統制するのに役立ちます。
活用例・メリット:
* メリット: 大規模なコードベースのリファクタリング、複数の機能開発の並行処理、複雑なデバッグ作業など、時間がかかりがちなタスクを効率的に処理できます。メインエージェントは全体の進捗を管理しつつ、詳細な実装はサブエージェントに任せることで、開発者はより戦略的な業務に集中できます。
* 活用例:
* メインエージェントが「新機能Aを開発せよ」と指示。
* メインエージェントが「データベーススキーマ変更」と「フロントエンドUI実装」の2つのサブタスクを認識。
* それぞれに対応するサブエージェントを起動し、並行して作業を委譲。
* 各サブエージェントは自身のコンテキストで独立して作業を進め、メインエージェントは全体の進捗を監視。
2. Planエージェント:アイデアを構造化された計画へ
概要・初心者向け説明:
「Planエージェント」は、あなたの漠然としたアイデアや要件を、具体的な開発計画に落とし込んでくれる賢いAIです。まるで経験豊富なプロジェクトマネージャーが隣にいるかのように、質問を通して要件を整理し、コードベースを分析して、詳細な実装手順と目標を提示してくれます。計画の立案に時間を取られがちな開発者にとって、強力な味方となるでしょう。
技術的詳細:
Shift + Tabまたは/planコマンドでアクセスできるPlanエージェントは、以下の4つのフェーズで動作します。
- 要件収集 (Requirements gathering): 構造化された質問と選択肢を通じて、ユーザーのアイデアを具体化・洗練させます。
- 調査・分析 (Research & analysis): コードインテリジェンス、後述の
grepやglobツールを駆使し、既存のコードベースを深く探索・分析します。 - 実装計画 (Implementation plan): 詳細なタスク分解、明確な目的、デモの記述を含む、実行可能な計画を作成します。
- ハンドオフ (Handoff): 承認された計画を、実際のコード実行を担当するエージェントに引き渡します。
Planエージェントは読み取り専用モードで動作するため、コードベースを探索してもファイルを変更することはありません。これにより、計画立案に集中し、誤ってコードを改変するリスクを防ぎます。
専門用語解説:
* コードインテリジェンス(Code Intelligence)とは: コードの構造、依存関係、意味などをAIが理解し、分析する能力。これにより、コードベース全体を俯瞰した上で適切な計画を立てることが可能になります。
活用例・メリット:
* メリット: 新機能開発や大規模な改修プロジェクトにおいて、初期段階での計画立案の精度と速度を大幅に向上させます。要件定義の漏れを防ぎ、手戻りを削減することで、開発全体の効率化と品質向上に貢献します。
* 活用例:
* 「ユーザー認証システムを改善したい」という漠然としたアイデアを入力。
* Planエージェントが「パスワードリセット機能は必要か?」「二段階認証は?」といった質問を投げかけ、要件を明確化。
* 既存の認証コードを分析し、変更が必要なファイルやモジュールを特定。
* 「認証APIの変更」「UIの更新」「テストケースの追加」といった具体的なタスクリストと、それぞれの目標、デモ方法を提示。
graph TD
A["アイデア/要件入力"]
B["要件収集 構造化質問"]
C["調査・分析 コードベース探索"]
D["実装計画 タスク分解"]
E["承認/ハンドオフ 実行エージェントへ"]
A --> B
B --> C
C --> D
D --> E
3. 高速ファイル検索ツール:grepとglob
概要・初心者向け説明:
Kiroに、開発者が日常的に使うファイル検索コマンド「grep」と「find」に代わる、新しい高速ツールが内蔵されました。これらはAIエージェントがコードベースを素早く探索するために最適化されており、特に.gitignoreファイル(Gitで管理しないファイルを指定する設定)を自動的に尊重するため、不要なファイルを検索対象から除外してくれます。これにより、より正確で効率的な検索が可能になります。
技術的詳細:
* grep: 正規表現(regex)を用いた高速なコンテンツ検索ツール。従来のgrep、rg(ripgrep)、ag(The Silver Searcher)コマンドの代替として機能します。.gitignoreを自動で尊重するため、ビルド生成物や一時ファイルなどを検索対象から除外できます。
* glob: グロブパターン(*.jsやsrc/**/*.tsなど)を用いた高速なファイル発見ツール。従来のfindコマンドの代替として機能します。こちらも.gitignoreを尊重します。
これらのツールは、現在の作業ディレクトリでデフォルトで信頼されており、エージェント設定でallowedPathsとdeniedPathsを設定することで、検索範囲を細かく制御できます。
専門用語解説:
* 正規表現(Regex)とは: 文字列のパターンを記述するための特殊な記法。複雑な文字列検索や置換に用いられます。
* グロブパターン(Glob Pattern)とは: ファイル名やパスをマッチングさせるためのシンプルなパターン。*(任意の文字列)、?(任意の一文字)などがよく使われます。
活用例・メリット:
* メリット: AIエージェントがコードベースを理解し、適切な情報を見つける速度が向上します。これにより、AIによるコード生成やデバッグ、リファクタリングの精度と効率が大幅に向上します。開発者自身が手動で検索する際も、これらのツールを介してよりスマートな検索が可能です。
* 活用例:
* 特定の関数名がどこで使われているか、AIエージェントがgrepを使ってコード全体から瞬時に検索。
* 特定の拡張子(例: .ts)を持つファイルを、globを使ってプロジェクト全体から効率的にリストアップ。
| ツール | Kiroのgrep/glob | 従来のgrep/find (例: bashコマンド) |
|---|---|---|
| 目的 | AIエージェントによる高速なファイル検索・発見 | ユーザーによる高速なファイル検索・発見 |
.gitignore対応 |
自動的に尊重 | 別途設定が必要 (例: grep -v -f .gitignore) |
| 連携 | AIエージェントとシームレスに統合 | コマンドラインからの実行が主 |
| 設定 | エージェント設定でallowedPaths/deniedPaths |
コマンドオプションで設定 |
| 利点 | AIのコード理解・操作能力向上、設定一元化 | 汎用性が高く、スクリプトでの利用が容易 |
4. マルチセッションサポート:作業の中断と再開がスムーズに
概要・初心者向け説明:
複数のチャットセッションを同時に管理し、中断した作業を簡単に再開できるようになりました。まるで複数のプロジェクトを同時に開いて、必要な時にすぐに切り替えられるような感覚です。これにより、異なる開発タスクやアイデア出しのセッションを並行して進めることができ、作業効率が向上します。
技術的詳細:
セッションは毎ターン自動的に保存されるため、作業内容が失われる心配がありません。以下のコマンドでセッションを管理できます。
kiro-cli chat --resume-picker: コマンドラインからインタラクティブなセッションピッカーを開きます。kiro-cli chat --list-sessions: 保存されているすべてのセッションを一覧表示します。/chat resume: チャットセッション内からセッションピッカーを開きます。
セッションピッカーでは、セッション名、最終アクティビティ、メッセージプレビューが表示され、目的のセッションを直感的に選択できます。
活用例・メリット:
* メリット: 複数の開発タスクを並行して進める際や、急な割り込みが入った場合でも、現在の作業状態を維持したまま別のタスクに切り替え、後でスムーズに戻ることができます。これにより、コンテキストスイッチのコストを削減し、生産性を向上させます。
* 活用例:
* 機能Aの開発中に、緊急のバグ修正依頼が入った場合、現在のセッションを保存し、新しいセッションでバグ修正を開始。
* バグ修正が完了したら、セッションピッカーから機能Aの開発セッションを再開し、中断したところから作業を続ける。
5. MCPレジストリサポート:組織でのAIツール管理を強化
概要・初心者向け説明:
企業やチームでKiroを使う際に、どのAIツール(MCPツール)が利用できるかを管理・統制できるようになりました。これにより、組織内でセキュリティポリシーや開発標準を遵守しつつ、AIツールを安全かつ一貫性のある方法で利用できるようになります。ガバナンスが強化され、大規模な導入がより容易になります。
技術的詳細:
MCPレジストリサポートは、組織が利用可能なMCPツールを管理・制御するためのガバナンス機能を提供します。これにより、特定のツールのみを許可したり、特定のバージョンのみを使用させたりすることが可能になり、チーム全体での一貫性とセキュリティが確保されます。
専門用語解説:
* ガバナンス(Governance)とは: 企業や組織が、その活動を適切に管理・統制するための仕組みや体制のこと。AIツールの利用におけるセキュリティ、コンプライアンス、倫理などを確保するために重要です。
活用例・メリット:
* メリット: 企業がAIツールを導入する際のセキュリティ上の懸念を軽減し、統制の取れた環境でAI活用を推進できます。特に機密情報を扱う開発現場において、安全なAI利用を保証する上で不可欠な機能です。
* 活用例:
* 企業が承認した特定のMCPツールのみを開発チームに提供し、未承認ツールの利用を制限。
* セキュリティ脆弱性のある古いバージョンのツールが使われないよう、最新バージョンのみを強制的に利用させる。
影響と展望:AI開発の未来を切り拓くKiro
Kiroの今回のリリースは、AIエージェントが単なるコード生成ツールではなく、開発プロセス全体の強力なパートナーへと進化していることを明確に示しています。サブエージェントによる並行処理能力の向上、Planエージェントによるインテリジェントな計画立案、そして高速なファイル検索ツールは、開発者が直面する複雑な課題に対し、より効率的かつ効果的な解決策を提供します。
特に、複雑なタスクの委譲と計画立案の自動化は、開発チームの生産性を劇的に向上させる可能性を秘めています。これにより、開発者はルーティンワークから解放され、より創造的で戦略的な業務に集中できるようになるでしょう。また、MCPレジストリサポートは、企業や大規模組織におけるAIツールの導入障壁を下げ、ガバナンスの強化を通じて安全なAI活用を促進します。Kiroは、AIが開発現場の「コパイロット」から「共同リーダー」へと進化する未来を牽引していく存在となるでしょう。
まとめ
Kiroの最新リリースは、AI開発の新たな地平を切り開く重要なアップデートです。主なポイントは以下の通りです。
- サブエージェント: 複雑なタスクを専門エージェントに委譲し、並行処理と効率的なコンテキスト管理を実現。
- Planエージェント: アイデアを構造化された実装計画に自動変換し、計画立案の精度と速度を向上。
- 高速ファイル検索 (grep/glob):
.gitignoreを尊重するAI最適化された検索ツールで、コードベース探索を高速化。 - マルチセッションサポート: 複数の開発タスクをシームレスに切り替え、中断した作業を簡単に再開可能。
- MCPレジストリサポート: 組織におけるAIツールのガバナンスを強化し、安全で一貫性のある利用を促進。
これらの機能により、Kiroは開発者の生産性を飛躍的に高め、よりスマートで効率的なソフトウェア開発を支援します。AIとの協調作業が、これからの開発の常識となるでしょう。

