ns2jbは、任天堂のNintendo Switch 2で、メーカーが想定していないプログラムを動かせるようにした「脱獄」の手法です。開発者のSammy Hajhamid氏が2026年10月18日にブログで公開しました。OpenAIのAI「Codex」が弱点探しに使われたことで注目を集めています。ただし、電源を切ると元に戻る「お試し版」のような段階です。
ns2jbを一言でいうと?
ns2jbは、Switch 2に本来は許されていないプログラムを実行させるための、ソフトウェアだけで完結する脱獄手法です。本体を分解したり、専用チップを取り付けたりする必要はないと、GIGAZINEの記事は説明しています。
身近なたとえでいうと、ビルの正面玄関の鍵を壊すのではなく、点検口の見落とされた隙間から入り、従業員用の通路を歩けるようにするようなものです。
実際には、ゲームソフトの中にある計算の抜けと、本体のファイル管理部分にある弱点を順番に突いています。「鍵を開ける魔法」があるわけではなく、小さな見落としをつないでいる、というのが実像です。
これまでと何が変わるのか
- Switch 2のゲームを改造する道が、初めて公に示されました。 実演として「マリオカート ワールド」に新しいキャラクターが追加されました。ただし、誰でも手軽にできる状態ではありません。
- AIが実機を遠隔操作しながら、弱点探しを手伝いました。 AIのニュースを追っている人にとっては、AIが「文章を書く」だけでなく「機械を動かして試す」使われ方をした例です。
- 任天堂が今後どう対応するかが注目されています。 資料の範囲では、任天堂の公式な反応は確認できません。
ns2jbとは?誰が作ったもの?
作ったのは、pepsipuの名前でも知られるSammy Hajhamid氏です。手法の解説は本人のブログにまとまっています。ソースコードはGitLabで公開されていると、GIGAZINEは伝えています。
※脱獄(jailbreak)とは: 機械に付けられた「メーカーが許可したソフトしか動かさない」という制限を外し、許可されていないプログラムも動かせるようにすることです。
※脆弱性(ぜいじゃくせい)とは: ソフトの作りの不備から生まれる、セキュリティ上の弱点のことです。
ChatGPTのようなサービスとは何が違うのか
ChatGPTは、話しかけると答えてくれるAIサービスです。ns2jbはAIサービスではありません。「Switch 2の弱点を突く手順とそのコード」のことです。
AIは、この手法を見つける過程で使われた道具です。使われたのはOpenAIのコーディング用AI「Codex」です。つまり、ns2jbは「AIが作った製品」ではなく、「AIを助手にした人間の研究成果」と見るのが正確です。
対象は、本体の基本ソフト(ファームウェア)のバージョン23.0.1です。ブログでは、これが記事公開時点の最新版とされています。
なぜ話題になっているのか
理由は大きく三つあります。
一つ目は「初めて」だからです。ブログで開発者本人は、Switch 2向けとしては自分の知る限り最初のこの種の攻略法だと述べています。tbreakも、発売から1年あまりで出た最初の公開された脱獄だと伝えています。
二つ目は、AIが実機を動かして調べた点です。開発者は初代SwitchとSwitch 2の両方に、遠隔操作の装置をつなぎました。AIは画面を見て、コントローラーを操作して、結果を確かめながら進められました。
三つ目は、分かりやすい実演です。人気のレースゲームに、シナモロールやピーター・グリフィンなどが登場する動画が公開されました。tbreakによれば、初音ミクや「アングリーバード」のレッドも追加されています。
海外のエンジニア向けニュースサイト「Hacker News」でも多くの票を集めており、国内ではGIGAZINEが10月23日に取り上げました。一方、情報サイトGBAtempは「ごく初期の段階」と評しています。この評価はtbreakの記事を通じて確認できます。
どんな仕組みで、何ができるのか
1. 何ができる? 非公式プログラムの実行、ゲーム解析、セーブの取り出し
資料1によれば、ns2jbでは本体の裏方として動く部品(システムモジュール)の権限で、好きなプログラムを動かせます。ここには、ファイル管理を担う「fs」という部品も含まれます。
これにより、自作ソフトの実行、ゲームの解析や改造、セーブデータの本体外へのバックアップなどが可能になります。本体の周辺機器の多くにも、メモリを通じて触れられるとされています。
2. 入り口は? 初代Switch用ゲーム「プチコン4」
きっかけは、初代Switch用のプログラミングソフト「プチコン4 - SmileBASIC」でした。Switch 2は初代のゲームを動かせるため、これが入り口になります。GBAtempは、デモに必要なのはバージョン4.4.9だと紹介しています。
Codexは、このソフトの中で数字の計算にまつわる不具合を見つけました。配列(データを並べた箱)から要素を取り除くとき、足し算の結果が大きくなりすぎて、マイナスの値に変わってしまうものです。走行距離メーターが一周して0に戻るのに似ています。これで、本来触れないメモリを読み書きできるようになりました。ただし、この段階で操作できるのはプチコン4の内部だけです。
3. 権限を上げる方法は? ファイル管理の弱点と署名チェック
メモリ操作だけでは、本体を動かす裏方の部品には届きません。そこで使われたのが、ファイル管理部品「fs」の弱点です。tbreakは、ファイルの場所を示す文字列の扱いに不備があり、データがあふれる問題だと説明しています。GIGAZINEは、この弱点を突き止めたのはハジハミド氏だと書いています。
さらにtbreakによると、プログラムを起動する部品は元のファイルの署名(本物かどうかの証明)をチェックします。しかし、ファイルの中身を渡すのはfsです。そのfsを操作できるため、すり替えた実行ファイルが通ってしまいます。
4. AIの「目と手と指」
AIを働かせるために、開発者はJetKVMという遠隔操作装置を使いました。映像を取り込み、コントローラーの入力を送れます。
Switch 2がクラッシュすると、電源ボタンを押し直す必要があります。そこで、Bluetoothで動く照明スイッチ用の装置を電源ボタンの上に置き、押す役をさせました。
なお、ブログに出てくる「set a goal to jailbreak the switch 2. make no mistakes」という指示文は、本人によれば冗談のキャプションです。実際には約2週間の相当な作業が必要でした。
5. 効果は「再起動で消える」
ns2jbは「テザード」と呼ばれる型です。実行した間だけ有効で、再起動すると消えます。砂浜に書いた文字のようなもので、波が来る(再起動する)たびに書き直しが必要です。
なお、ブラウザ経由の攻略も試されました。既知の弱点を使って動作を乗っ取るところまでは進んだものの、守りの仕組みに阻まれ、脱獄に必要な段階には届きませんでした。
自分に関係ある? 向いている人・向いていない人
結論から言うと、一般の人が直接使うものではありません。普段使うサービスの裏側に組み込まれていく種類のものでもありません。ゲーム機のセキュリティ研究の成果です。
向いている人
- 自分でコマンドを動かせる開発者やセキュリティ研究者
- ゲーム機の仕組みを調べたい人
向いていない人
- 手軽に遊びを増やしたいだけの人
- 本体の保証や不具合の可能性を避けたい人
企画・営業・マーケ・学生の方が押さえておく点は、二つです。AIが実機を操作して調べる開発スタイルが現実になったこと。そして、人気製品の弱点が公開されると、メーカーの対応が注目されることです。
普段のSwitch 2への影響(更新の有無など)は、資料からは確認できません。
触ってみるには? 入手先と前提条件
ここからは実際に触ってみたい人向けです。読み飛ばしても全体像は分かります。
入手先は、GitLabのns2jbリポジトリです。背景は開発者のブログにあります。
前提条件は資料によって書かれ方が異なります。
- tbreak(GBAtempの情報を引用): SmileBASIC 4のゲーム、同じローカルネットワーク上のPC、Node.js 22以降、約20MBのセーブ用の空き容量が必要です。
- GIGAZINE: LinuxまたはmacOSを搭載したPCやプチコン4などが必要です。
二つは矛盾というより、見ている点が違うようです。OSの種類とNode.jsの版は別の話ですが、両者の関係は資料からは確認できません。
具体的な手順やコマンドは、手元の資料からは確認できないため、ここでは書きません。試す場合は、必ず公開元の最新の説明を読んでください。本体への影響や保証についても、資料には記載がありません。
注意点・現時点で分かっていないこと
分かっている制約
- 再起動すると消えます。カスタムファームウェア(本体の基本ソフトの入れ替え)を永続的に入れる手法ではありません。
- Switch 2のセキュリティをすべて破ったわけでもありません。
- 開発者は、他のシステムモジュールへの侵入や、ブラウザからの同様の攻撃を今後の課題としています。
- GIGAZINEによると、10月21日の実機試験では、再起動を挟んだ3回目の試行で動作しました。毎回すぐ成功するとは限らないことがうかがえます。
資料の間で食い違う点
入り口のゲームの入手状況は、資料で述べ方が違います。GIGAZINEは、プチコン4は記事作成時点で配信が停止されていると書いています。tbreakは「購入できるゲーム」が入り口だと述べ、Wccftechは任天堂がeShopから外して早く修正すると予想している、と紹介しています。どちらが現在の状況に近いかは、資料からは判断できません。
また、tbreakは「ある初代Switchのゲームに頼る」と強調しています。一方、GIGAZINEによれば、別の人物(Alula氏)がXで「ノラと皇女と野良猫ハート2」の体験版を使った同様の動画を公開しています。入り口は一つに限られない可能性がありますが、その詳細は資料からは確認できません。
公表されていないこと
- 任天堂の声明や修正対応: tbreakは、声明は見ていないと書いています。
- ns2jbのライセンスや利用条件: 資料からは確認できません。
- 料金: コードは公開されていますが、入り口のゲームの価格などは資料に出てきません。
- 初代Switchでも動くとの記述はありますが、開発者はその向けにはまとめていないとされています。
なお、tbreakは、任天堂が最近GitHubからSwitchエミュレーターの関連リポジトリ401件を削除させたことにも触れています。今回の件への対応は、まだ分かりません。
まとめ
- ns2jbは、Switch 2で非公式プログラムを動かせるようにした、ソフトウェアだけの脱獄手法です。
- 見つけるまでにOpenAIのAI「Codex」が使われましたが、AIだけで完成したのではなく、約2週間の人の作業が必要でした。
- 再起動で消える型で、永続的な改造ではなく、研究の初期段階という評価が出ています。
- 一般の人が気軽に使うものではなく、必要な環境も整える必要があります。
- 任天堂の対応や利用条件は、資料の範囲では未公表です。今後の続報を待つ必要があります。
よくある質問
ns2jbはプログラミングができなくても使えますか?
現時点では難しいと考えたほうがよいです。資料によると、初代Switch用ゲームのSmileBASIC 4、同じネットワーク上のPC、Node.js 22以降、約20MBの空き容量などが必要です。今は開発者や研究者向けの段階です。
ns2jbは無料で試せますか?
ソースコードはGitLabで公開されていますが、料金やライセンスの条件は資料からは確認できません。入り口に使うゲームの購入費用や、配信停止後の入手可否も資料では分かれています。無料かどうかは断定できません。
ns2jbを使うと、Switch 2は永久に改造されたままになりますか?
なりません。ns2jbは「テザード」と呼ばれる方式で、再起動すると効果が消え、もう一度実行が必要です。カスタムファームウェアを永続的に入れられるわけでもないと、資料2と資料3は伝えています。
ns2jbはAIだけで作られたのですか?
違います。開発者のハジハミド氏は、AIに任せきりではなく脱獄の実現に約2週間の試行錯誤が必要だったと述べています。Codexは弱点の一つを見つけた一方、ブラウザ経由の試みは成功しませんでした。
任天堂は対策をしましたか?
資料の範囲では、任天堂の声明や修正は確認できません。tbreakは、Wccftechが「ゲームの販売停止と脆弱性の修正が早期に行われる」と予想していると紹介しています。これは予想であり、確定した情報ではありません。