DeepInferとは?DeepSeek公開の推論エンジンの仕組み・特徴・使い方を解説

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DeepInferとは?DeepSeek公開の推論エンジンの仕組み・特徴・使い方を解説

DeepInfer(ディープインファー)は、中国のAI企業DeepSeekが2026年10月20日に公開した、AIを速く動かすための「裏方」のソフトです。チャットAIの画面ではなく、その裏で計算をさばく部分にあたります。その設計図にあたるプログラムが、誰でも読める形で公開されました。そのため開発者の間で名前を見かけるようになっています(公式リポジトリ)。

DeepInferを一言でいうと何ですか?

DeepInferは、DeepSeekのAIを大勢の利用者に向けて速く動かすための、裏方のソフトです。

身近なたとえで言うと、レストランの厨房の段取りに近いものです。AIモデル(質問に答える頭脳の部分)が料理人だとすると、DeepInferは「注文をどう振り分け、どの順で作り、どう素早く出すか」を決める仕組みと調理器具のセットです。料理人の腕前を上げるものではなく、たくさんの注文をさばく厨房の運営を良くするものです。

実際には、AIが答えを作る計算を、たくさんの計算用チップに手分けさせたり、無駄な待ち時間を減らしたりします。公式の説明では、DeepSeekの大規模な本番サービスを支えているソフトだとされています(GitHub)。

これまでと何が変わるのですか?

  • 普段使うサービスの速さや安さにつながる可能性があります。 DeepSeekは、計算にかかる費用と電気代を減らし、AIをより手頃にしたいという狙いを述べています(blockchain.news)。ただし、利用料金が実際に下がるかどうかは、資料からは確認できません。
  • AI企業の「裏側」の一部が見られるようになりました。 自社の本番サービスを支えるソフトが、Apache License 2.0(オープンソースの公開ルールの一つ)のもとで出されました(GitHub)。
  • 自分の設備でDeepSeekのAIを動かしたい会社には、手がかりが増えました。 ただし、サービスとして完成させるには足りない部品もあります。詳しくは「注意点」の節で説明します。

DeepInferとは誰が作ったものですか?

DeepSeekが作り、GitHub(プログラムの置き場所)で公開しているソフトです。公式の説明では「高性能な推論フレームワーク」と呼ばれています(GitHub)。

「推論」とは、AIが質問を受け取って答えを作る処理のことです。「フレームワーク」は、ひとまとまりの土台だと思ってください。

ChatGPTのようなチャットAIは、3つの層に分けると分かりやすくなります。画面(アプリ)、頭脳(モデル)、頭脳を動かす仕組みの3つです。DeepInferは3つ目にあたります。話しかけて使うアプリではありません。

項目 チャットAIのアプリ DeepInfer
何か 画面を開いて話しかけるサービス その裏で計算を回す部品
主に触る人 一般の利用者 開発者・サービスの運営側
公開の形 画面やアプリ ソースコード(プログラムの設計図)

公開版が対応しているモデルは、現時点でDeepSeek-V4.1-Flashだけです(GitHub)。モデル側の特徴や料金の目安は、当サイトのDeepSeek 4.1 Flashとは?安さの理由(仕組み)・使い方・料金の目安を解説や、DeepSeek-v4.1-Flash-1017とは?無償公開のAIモデルの特徴・料金・使い方をやさしく解説で扱っています。

なお、DeepInferは同じ分野の既存ソフトを土台にしています。公式の謝辞によると、もともとはvLLMを中心に作られ、SGLangとTensorRT-LLMからも着想を得たそうです(GitHub)。

なぜ今、名前を見かけるのですか?

理由は大きく3つあります。

1つ目は、発表の内容です。DeepSeekは10月20日に、公式のXアカウントでDeepInferの公開を発表しました。大規模なサービスで速く、遅れも少なく動かせることを掲げ、計算費用と電力を減らす狙いを述べています(blockchain.news)。

2つ目は、公開されたものが本番で使っているソフトだという点です。DeepSeekはこれまでにも、モデルや計算用の部品(演算ライブラリ)を公開してきました(Crypto Briefing)。今回は、それらを束ねて動かす土台そのものが出ました。

さらに、今後の新しいモデルの推論用プログラムや改良も、この土台の上で更新していくと発表されています(KuCoin、新浪財経)。更新の時期や頻度は、資料からは分かりません。

3つ目は、開発者の間での盛り上がりです。技術系の掲示板Hacker Newsでは「DeepSeek just open-sourced its inference engine」という題の話題が立ち、GitHubのリポジトリにも注目が集まっています。

報じられている数字は?

ニュースサイトのCrypto Briefingは、DeepSeek-V4.1-Flashに関する性能として、次の数字を伝えています(Crypto Briefing)。

  • 1日あたり155兆トークン(1つのクラスタあたり)。 トークンとは、AIが文章を扱うときの細かい断片です。クラスタは、まとまって動く計算機のグループのことです。桁が大きく実感しにくい数字ですが、それだけ大量の文章を毎日さばいているという意味です。
  • 入力キャッシュの命中率が96%。 過去に処理した内容を覚えておいて再利用する割合です。同じ説明を何度も聞かれたとき、毎回ゼロから考えずに前のメモを見るようなものです。
  • 最初の返事が出るまで平均約400ミリ秒。 約0.4秒、つまり1秒の半分より短い時間です。
  • 生成の速さは毎秒230トークン。 コーディング用途では最大で毎秒300トークンとされています。

この数字には注意が必要です。出典はこの記事で、公式のREADME(説明書き)の文章には、これらの数値は載っていません。READMEにあるのは、性能を示すグラフ画像と、その測定条件(準備作業の測定は4基のGPU、答えを作る段階の測定は64基)だけです(GitHub)。

また、READMEによると、今回の公開版には「KVキャッシュ」(過去の処理内容を覚えておく仕組み)が含まれていません。上の命中率が、公開された部分だけで再現できるのかは、資料からは確認できません。

華為(Huawei)のチップにも対応

対応チップはNVIDIAのSM100 GPUと、Huawei Ascend 950 NPUの2種類です。Crypto Briefingは、中国製のチップがNVIDIAと並んで公式の公開物に入ったことを、見どころの一つとして挙げています。これは同記事の見方です。

背景: モデル側の動き

新浪財経は、DeepSeekが10月17日にV4.1 Flashを更新したと伝えています。API(外部のソフトからAIを呼び出す窓口)の価格は据え置きだそうです(新浪財経)。モデルの更新とDeepInferの公開が、近い時期に重なった形です。

どんな特徴がありますか?

公式の機能一覧から、主なものを5つ選びました。各項目は「何ができるか」を先に、「どう実現しているか」を後に書いています(GitHub)。

1. たくさんのチップに仕事を手分けする

できること: 一台には収まらない大きなAIを、多数のチップで分担して動かせます。

仕組み: READMEには、Attention DP / balanced CP、MoE EP + EPLBという並列化の方式が並んでいます。MoEは、質問ごとに専門の部分ネットワークへ振り分けるタイプのAIです。EPは、その専門部分を別々のチップに置いて動かす考え方です(Crypto Briefing)。それ以外の方式の細かい説明は、資料にありません。

2. 先読みして速くする

できること: 答えが出るまでの時間を縮められます。

仕組み: 「DSpark」と呼ばれる方式です。次に出る言葉を先に何個か予想し、あとでまとめて正しいか確かめます。予想の確からしさの見積もりを使って、確かめるタイミングを決めます。予想が当たれば、1つずつ作るより速く進みます。

3. 無駄な待ち時間と下準備を減らす

できること: 計算チップが遊んでいる時間と、やり直しの作業を減らせます。

仕組み: 非同期スケジューリングは、次の仕事の段取りを、今の計算と同時に進める方式です。厨房で、今の料理を作りながら次の注文の準備をするのに似ています。初期設定で有効になっています。

もう一つが「SWA bounded replay」です。答えを作り始める前の下準備のやり直しを、必要な末尾の部分だけに絞ります。SWAという略語の意味は、資料に説明がありません。

4. 同じ入力なら同じ答えを返す

できること: 同じ質問と同じ設定なら、毎回まったく同じ出力が得られます。ほかの人の質問と一緒に処理されても、結果が変わらないようにもできます。

仕組み: 「バッチ不変(batch-invariant)」の推論と、「決定的サンプリング」という機能です。決まった乱数の種(seed)を渡して使います。どちらもNVIDIA製のチップでのみ使えます。用途の説明は資料にありませんが、結果の再現が必要な場面で意味を持つ機能です。

5. 出力の形を指定できる

できること: 答えを、決まった書式の中に収められます。たとえば、後でプログラムが読み取りやすいJSON(データの書式の一つ)で返させられます。

仕組み: 正規表現、JSONスキーマ、EBNF文法のいずれかで、生成の条件を縛ります。

これらの土台には、FlashMLA、DeepGEMM、DeepEPなどの計算用部品が使われています。DeepSeekが別のリポジトリで公開しているものも含まれます。

自分に関係はありますか?

結論から言うと、エンジニアでない人が直接使うものではありません。普段使うサービスの裏側に組み込まれていく種類のソフトです。

READMEの設定を見る限り、使うには専用のGPUかNPUを備えたLinux環境を整え、自分でビルドする必要があります(GitHub)。画面を開いて使える形では配られていません。

企画・営業・マーケの立場なら、次のように捉えるのが現実的です。DeepSeekのAIを自社で動かすかどうかの検討が出たときに、選択肢として名前が挙がるソフトです。ただし、資料から分かる料金や導入費用の情報はありません。

向いている人

  • Linuxの扱いに慣れていて、自分で環境を組める開発者や研究者
  • NVIDIAのSM100 GPUか、Huawei Ascend 950 NPUを使える環境がある人
  • DeepSeek-V4.1-Flashを、自前の設備で動かして試したい人
  • 大規模な推論の工夫(先読み、手分け、再現性など)の中身を学びたい人

向いていない人

  • 画面を開いてすぐ使えるチャットAIを探している人。普通のアプリを使う方が早いです。
  • 一般的なパソコンで気軽に試したい人。動作確認されている機器は限られており、資料では一般的なパソコンへの対応は確認できません。
  • DeepSeek以外のモデルを動かしたい人。資料に他のモデルへの対応は書かれていません。
  • 応答の速さが命のリアルタイム製品に、すぐ使いたい人。Crypto Briefingは、公開版がオフライン推論(その場で即答するのではなく、まとめて処理する使い方)中心である点から、切り替える前によく評価すべきだと述べています。

触ってみるにはどうすればいいですか?

ここからは実際に触ってみたい人向けです。読み飛ばしても全体像は分かります。

入手先と前提条件

入手先はGitHubのdeepseek-ai/DeepInferです。READMEに書かれている前提条件は次のとおりです。

  • Linux
  • GCC 13.0以上
  • Python 3.12
  • CUDA 13(NVIDIAの場合のみ)
  • CANN 9.2(Ascendの場合のみ)
  • 対応ハードウェア: NVIDIA SM100 GPU、またはHuawei Ascend 950 NPU

ビルド

ビルドの前に、空のPython 3.12環境を作って有効にしておきます。そのうえで、使うチップの種類を環境変数で指定して、ビルドを実行します。NVIDIAなら次のとおりです。Ascendの場合は、nvidiaの代わりにascendを指定します。

export DEEPINFER_ACCELERATOR=nvidia
./build.sh

この環境変数は、DeepInferを動かす環境でも指定したままにしておく必要があります。

試しに動かす

サンプルのプログラムが用意されています。

python examples/offline_inference.py

標準のモデルは、Hugging Face上のdeepseek-ai/DeepSeek-V4.1-Flash-1017です。初回の実行時に、Hugging Faceのキャッシュへダウンロードされます。手元に保存したコピーを使いたいときは、環境変数DEEPINFER_HF_MODEL_DIRにその場所を指定します。ダウンロードの容量や必要なメモリ量は、資料に書かれていません。

主な設定

READMEに載っている主な環境変数は次のとおりです(GitHub)。

  • 先読み(DSpark): DEEPINFER_ENABLE_MTP_VARLEN=1で有効にします。DEEPINFER_USE_NEXTN_DECODEで、先読みする長さの上限を決めます。初期値は5です。
  • SWA bounded replay: V4.1の標準設定は、DEEPINFER_YOCO_PREFILL_TRUNCATION_MODE=compactとDEEPINFER_YOCO_PREFILL_KEEP_TOKENS=140です。
  • バッチ不変の推論: DEEPINFER_BATCH_INVARIANT=1(NVIDIAのみ)。
  • 決定的サンプリング: DEEPINFER_BATCH_INVARIANT=1とDEEPINFER_ENABLE_MTP_VARLEN=0を指定し、SamplingParamsに固定のseq_seedを渡します(NVIDIAのみ)。
  • 出力の形の指定: SamplingParamsにso_argsを渡します。例はリポジトリのexamples/_structured_output.pyにあります。

サンプルや評価の詳しい手順は、リポジトリ内のexamplesとevalのREADMEが案内先とされています。

注意点や、まだ分かっていないことは?

公開されたのは「一部」

READMEは、完全な推論サービスに必要でも今回の公開に含まれないものを、3つ挙げています(GitHub)。

  • KVキャッシュのシステム
  • 準備段階と回答段階を別々の機械に分ける仕組み(VE/Prefill/Decodeの分離)。必要な機能の多くは実装済みとされています。
  • 準備段階と回答段階の両方で、複数の複製に負荷を振り分ける仕組み

公開版の中心は、READMEによればオフライン推論です。

資料の言い方に食い違いがあります

KuCoinと新浪財経は、DeepSeekが内部の推論フレームワークを「全面的に」公開すると伝えています。一方、READMEには、上のとおり今回含まれないものがあると書かれています。

つまり「全面公開」という言い方は、公開版だけでサービスが完結するという意味とは限りません。この点について、DeepSeekからの補足説明は、今回の資料の範囲では確認できません。

ほかに確認できなかった点

  • 対応モデル: 現時点ではDeepSeek-V4.1-Flashのみです。今後の新モデルへの対応は発表されていますが、時期は公表されていません。
  • 対応ハードウェア: SM100 GPUとAscend 950 NPUに限られます。バッチ不変の推論と決定的サンプリングは、NVIDIAのみです。
  • 性能の比較: 他の推論ソフトとの比較結果は、資料にありません。報じられた数字の条件も、不明な点が残っています。
  • ライセンスと料金: DeepInfer本体はApache License 2.0で公開されています。ソフトの使用料に関する記載はなく、動かすための設備費用も資料から分かりません。モデル側の利用条件は、別に確認が必要です。
  • deepseek-recipe: Crypto Briefing、KuCoin、新浪財経は、文章をトークンに分け、また戻す部品「deepseek-recipe」も同時に公開されたと伝えています。公式APIと同じ処理に合わせてあるため、自前で動かしても結果にずれが出にくいそうです。ただし、今回のREADMEの本文には登場せず、入手先は資料から分かりません。

まとめ

  • DeepInferは、DeepSeekのAIを大勢の利用者向けに速く動かすための、裏方のソフトです。チャットAIのアプリではありません。
  • DeepSeekが10月20日に公開しました。自社の本番サービスを支えるものだと説明され、誰でも読める形のオープンソースです。
  • 手分け、先読み、待ち時間の削減、同じ答えの再現、出力の形の指定といった工夫が入っています。
  • 一般の人が直接使うものではなく、普段使うサービスの裏側で効いてくるものです。料金への影響は、現時点では分かりません。
  • 公開されたのは一部で、対応するモデルやチップも限られます。性能の数字は報道ベースなので、確かめるときは出典に注意してください。

よくある質問

プログラミングができなくても使えますか?

直接使うことは想定されていません。入手先はGitHubで、使うにはLinuxやPython 3.12の環境を整えて自分でビルドする必要があります。一般の人は、DeepSeekなどのサービスの裏側で使われるソフトと考えるのが現実的です。

無料で試せますか?

ソフト自体はApache License 2.0で公開されています。資料には使用料の記載がありません。ただし動作対象はNVIDIAのSM100 GPUかHuawei Ascend 950 NPUで、設備の費用は資料から分からず、気軽に試せるとは言えません。

DeepInferとDeepSeekのAIモデルは同じものですか?

別のものです。モデルは質問に答える頭脳の部分で、DeepInferはそれを速く動かすための土台です。公開版が対応しているモデルは、資料1によると現時点でDeepSeek-V4.1-Flashだけです。

普通のパソコンやスマホで動きますか?

資料に書かれた対応ハードウェアは、NVIDIAのSM100 GPUとHuawei Ascend 950 NPUだけです。一般的なパソコンやスマホで動くかどうかは、資料からは確認できません。動作環境もLinuxが前提とされています。

DeepInferを使うとDeepSeekの利用料金は安くなりますか?

DeepSeekは、計算費用と電力を減らしAIをより手頃にしたいという狙いを述べています。ただし、DeepInferの公開で利用料金が下がるかどうかについて、資料には具体的な記載がなく、現時点では分かりません。

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