生成AIツールの進化が止まらない中、ローコード自動化プラットフォーム「n8n」が2025年8月4日に画期的なアップデートをリリースしました。このバージョンでは、パフォーマンス向上やエディタ改善に加え、特に料金モデルの大幅な変更が注目されます。アクティブワークフローの制限撤廃、新Business Planの導入により、あらゆる規模のユーザーがより柔軟に自動化を構築・運用できるようになります。
主要な変更点
1. アクティブワークフローの制限撤廃と新料金モデル
概要・初心者向け説明
これまでn8nでは、同時に実行できるワークフローの数に制限がありましたが、今回のアップデートでその制限が完全になくなりました。これにより、ユーザーはどれだけ多くの自動化ワークフローを作成・実行しても、ワークフロー数自体で課金されることはありません。料金は「実行回数」に基づいて計算されるため、より自由に、そして安心して複雑な自動化を試せるようになります。
技術的詳細
n8nの全プラン（StarterからEnterpriseまで）において、ユーザー数、ワークフロー数、ステップ数に上限が設けられなくなりました。課金は、ワークフローが実際にトリガーされ、データ処理が行われた「実行」のボリュームに基づきます。これにより、開発者はテスト環境で無数のワークフローを構築したり、データ量の多い、あるいは長時間の処理を伴う自動化を設計したりする際に、ワークフロー数のクォータを気にする必要がなくなります。この変更は、スケーラビリティとコスト効率の向上を目的としています。
活用例・メリット
- メリット: 開発者は、アイデアを形にする際の心理的・実質的な障壁が低減されます。例えば、A/Bテスト用の多数のワークフロー、異なるデータソースからのETL処理、複雑なビジネスロジックを持つ承認フローなど、多様な自動化を無制限に構築・テストできます。
- 活用例:
- マーケティング: 顧客セグメントごとに異なるメールキャンペーンを自動化するワークフローを複数作成し、効果測定を並行して行う。
- データ分析: 複数のSaaSツールからデータを収集し、異なる形式で整形・統合するワークフローを自由に構築・試行錯誤する。
- 社内業務: 部署ごとに異なる承認フローやレポート生成ワークフローを、それぞれ独立して運用する。
graph TD
A[旧料金] --> B[ワークフロー数制限]
B --> C[開発コスト増]
D[新料金] --> E[実行数ベース]
E --> F[無限ワークフロー]
F --> G[開発効率向上]
| 項目 | 旧料金モデル | 新料金モデル (2025-08-04以降) |
|---|---|---|
| アクティブワークフロー数 | 制限あり (プランによる) | 無制限 |
| ユーザー数 | 制限あり (プランによる) | 無制限 |
| ステップ数 | 制限あり (プランによる) | 無制限 |
| 課金基準 | ワークフロー数、ステップ数など | 実行回数 |
| 開発の自由度 | 中 | 高 |
2. 新セルフホスト型Business Planの導入
概要・初心者向け説明
中小企業や中規模企業向けに、セルフホスト型の新しいBusiness Planが登場しました。このプランは、チームでの利用を想定しており、セキュリティや管理機能が強化されています。例えば、複数のプロジェクトを共有したり、シングルサインオン（SSO）でログインしたり、Gitを使ったバージョン管理が可能になります。
技術的詳細
Business Planは、成長中のチーム向けに設計されており、以下の主要機能を含みます。
* 6つの共有プロジェクト: チームメンバー間でワークフローやリソースを共有し、共同作業を効率化します。
* SSO, SAML, LDAP: 既存の企業認証システムと連携し、セキュリティとユーザー管理を簡素化します。※SSO（シングルサインオン）とは: 一度の認証で複数のシステムやサービスにログインできる仕組み。SAML（Security Assertion Markup Language）やLDAP（Lightweight Directory Access Protocol）は、そのためのプロトコルやディレクトリサービスの一種です。
* 異なる環境: 開発、ステージング、本番など、複数の環境を分けて運用できるため、安全なデプロイメントプロセスを確立できます。
* グローバル変数: 複数のワークフローで共通して使用する設定値などを一元管理できます。
* Gitによるバージョン管理: ワークフローの変更履歴をGitで管理し、ロールバックやチームでの共同開発を容易にします。※Gitとは: プログラムのソースコードなどの変更履歴を記録・追跡するための分散型バージョン管理システムです。
* 30日間のインサイト: ワークフローの実行状況やパフォーマンスに関する詳細な分析データを30日間参照できます。
活用例・メリット
- メリット: チーム開発の効率化、セキュリティ強化、運用管理の簡素化が図れます。特に、CI/CD（継続的インテグレーション/継続的デリバリー）パイプラインにn8nワークフローを組み込む企業にとって、Git連携は大きな利点となります。
- 活用例:
- 開発チーム: 開発環境でワークフローを構築し、テスト後、Gitでバージョン管理しながらステージング、本番環境へとデプロイする。
- セキュリティ部門: SSO連携により、n8nへのアクセスを一元管理し、セキュリティポリシーを適用する。
3. Enterpriseプランの実行ベース課金への移行
概要・初心者向け説明
大企業向けのEnterpriseプランも、これまでのワークフロー数に基づく課金から、Business Planと同様に「実行回数」に基づく課金モデルへと変更されました。これにより、大規模な自動化を運用する企業は、より予測可能で、実際に利用した分だけ支払う形になります。
技術的詳細
Enterpriseプランも、アクティブワークフロー数ではなく、実行ボリュームに応じた課金体系に移行しました。これにより、エンタープライズレベルでの大規模な自動化導入におけるコスト管理がより透明かつ効率的になります。複雑なシステム連携や膨大なデータ処理を伴うワークフローを、ワークフロー数の上限を気にせず設計・運用できるようになります。
活用例・メリット
- メリット: 大規模な組織において、柔軟な自動化戦略が可能となり、ビジネスの成長に合わせてスケーラブルな運用が実現します。コストの透明性が高まり、予算計画が立てやすくなります。
- 活用例:
- グローバル企業: 各国の拠点や事業部で異なる自動化ニーズに対応するため、それぞれに特化したワークフローを無制限に構築・運用し、全体の実行ボリュームに応じてコストを最適化する。
影響と展望
今回のn8nのアップデートは、ローコード自動化ツールの市場に大きな影響を与えるでしょう。特に、アクティブワークフローの制限撤廃と実行ベースの料金モデルへの移行は、開発者や企業が自動化を導入する際の障壁を大きく下げます。これにより、より多くの企業がn8nを採用し、自動化の適用範囲を拡大することが期待されます。中小企業から大企業まで、あらゆる規模の組織が、コストを気にせず自由にアイデアを形にできる環境が整ったと言えます。
今後は、この自由度の高さを活かして、さらに複雑で高度な自動化、特に生成AIとの連携を深めたワークフローの登場が加速するでしょう。n8nのコミュニティも、より多様なユースケースやソリューションが共有されることで、一層活性化すると考えられます。自動化がビジネスの競争優位性を確立する上で不可欠となる中、n8nは今後もその中心的な役割を担っていくことでしょう。
まとめ
今回のn8nのアップデートの主要なポイントをまとめます。
- アクティブワークフロー数、ユーザー数、ステップ数が無制限に: 開発の自由度が飛躍的に向上しました。
- 料金モデルが「実行回数」ベースに移行: コストの透明性が高まり、大規模な自動化も安心して導入できます。
- 新セルフホスト型Business Planが登場: チーム開発を強力にサポートする機能（SSO、Git連携など）が充実しました。
- Enterpriseプランも実行ベース課金へ: 大規模組織でのコスト管理とスケーラビリティが向上します。
- パフォーマンス向上、エディタ改善、新ノード追加: 全体的なユーザーエクスペリエンスが向上しています。
