n8n最新リリース速報！AIワークフローとエンタープライズ連携が飛躍的に進化
2025年6月23日、ノーコード・ローコードの自動化ツールn8nが待望の最新バージョンをリリースしました。今回のアップデートは、生成AIを活用したワークフローの柔軟性を高める「Model Selectorノード」の追加をはじめ、エンタープライズ利用を加速させるOIDC（OpenID Connect）によるSSO（Single Sign-On）対応、そしてGit連携の強化など、多岐にわたる重要な変更を含んでいます。初心者の方から、日々の業務でn8nを深く活用するエンジニアまで、すべてのユーザーにとって見逃せない内容となっています。
主要な変更点と詳細解説
1. LLMルーティングを革新する「Model Selectorノード」
概要・初心者向け説明
「Model Selectorノード」は、複数の大規模言語モデル（LLM）をワークフロー内で賢く使い分けるための新しいノードです。これまでは、特定のLLMに固定して処理を行うことが多かったですが、このノードを使えば、入力データや特定の条件に基づいて最適なLLMを自動的に選択し、処理を振り分けることができるようになります。例えば、「コストを抑えたい場合はAモデル、精度を最優先するならBモデル」といった使い分けが、ワークフロー内で簡単に実現できます。
技術的詳細と専門用語解説
Model Selectorノードは、ワークフローに接続された複数のLLMノードの中から、指定された条件（式やグローバル変数など）に基づいて、どのモデルが特定の入力を処理すべきかを決定します。これにより、パフォーマンス、タスクの種類、コスト、可用性といった多様な基準に基づいたモデルルーティング戦略の実装が容易になります。
- LLM（Large Language Model）とは: 大規模言語モデルの略で、人間が使う自然言語を理解し、生成することができるAIモデルのことです。ChatGPTやGeminiなどが代表的です。
- ルーティング戦略とは: 複数の選択肢の中から、特定の条件に基づいて最適な経路やリソースを選択する仕組みのことです。
- 式（Expression）とは: n8nワークフロー内で動的な値を計算するために使用されるJavaScriptベースのコードスニペットです。例えば、入力データの特定のフィールド値に基づいて条件を評価する際に使われます。
- グローバル変数とは: ワークフロー全体で共有される変数のことで、環境設定や共通のパラメータを保持するために利用されます。
具体的な活用例・メリット
- コスト最適化: 質問の複雑度に応じて、安価なモデルと高性能なモデルを使い分け、全体的なAPIコストを削減します。
- パフォーマンス向上: 緊急性の高いタスクには高速なモデルを、バッチ処理には低速だが高精度なモデルを割り当てることで、システム全体の応答性を最適化します。
- タスクタイプに応じたモデル選択: 要約タスクには要約に特化したモデルを、コード生成タスクにはコード生成に強いモデルを自動的に選択させます。
- A/Bテスト: 異なるLLMの性能を比較評価する際に、特定の割合でトラフィックを振り分け、結果を分析します。
🛠️How to: 複数のLLMノードをModel Selectorノードに接続し、ノード設定でルーティング条件を構成します。
🧠Keep in mind: ルールは上から順に評価され、最初に一致したルールが適用されます。また、サブノードとして、式は各アイテムごとに解決されるのではなく、常に最初のアイテムに解決される点に注意が必要です。
graph TD
A[入力データ] --> B[Model Selector]
B --> C[条件評価]
C -- 条件1 --> D[LLM A]
C -- 条件2 --> E[LLM B]
D --> F[結果出力]
E --> F
2. エンタープライズ向け認証強化：OIDC SSO対応
概要・初心者向け説明
n8nが新たにOIDC（OpenID Connect）によるSSO（Single Sign-On）をサポートしました。これは、企業が従業員の認証をより簡単かつ安全に管理できるようにするための機能です。一度ログインすれば、n8nを含む複数のアプリケーションに再ログインなしでアクセスできるようになり、セキュリティと利便性が向上します。
技術的詳細と専門用語解説
OIDCは、OAuth 2.0プロトコル上に構築されたシンプルなIDレイヤーであり、ユーザーの認証とID情報の取得を可能にします。これにより、企業は既存のIDプロバイダー（Okta, Azure ADなど）とn8nをシームレスに統合できます。既存のSAML（Security Assertion Markup Language）に加えてOIDCが選択肢に加わったことで、エンタープライズチームは自社のインフラに最適な認証標準を選択できるようになりました。
- OIDC（OpenID Connect）とは: OAuth 2.0の上に構築された認証プロトコルで、ユーザーが一度ログインするだけで複数のサービスにアクセスできるシングルサインオン（SSO）を実現するための標準です。軽量でモバイルフレンドリーなのが特徴です。
- SSO（Single Sign-On）とは: ユーザーが一度の認証で、複数の独立したシステムやアプリケーションにアクセスできるようになる仕組みです。パスワード管理の手間を減らし、セキュリティを向上させます。
- SAML（Security Assertion Markup Language）とは: XMLベースの認証・認可プロトコルで、主にエンタープライズ環境でのSSOに利用されます。OIDCよりも歴史が長く、複雑な設定が可能です。
具体的な活用例・メリット
- セキュリティ強化: 企業が中央集権的にユーザー認証を管理できるため、セキュリティポリシーの一貫性を保ちやすくなります。
- ユーザーエクスペリエンス向上: 従業員はn8nにアクセスするたびにログイン情報を入力する手間が省け、生産性が向上します。
- 管理の簡素化: ユーザーの追加・削除や権限管理が既存のIDプロバイダーを通じて一元的に行えるため、IT管理者の負担が軽減されます。
| 項目 | OIDC | SAML |
|---|---|---|
| ベース技術 | OAuth 2.0 | XML |
| 特徴 | 軽量、モバイルフレンドリー | 複雑、エンタープライズ向け |
| ユースケース | Web, モバイルアプリ | Webアプリケーション |
| n8nでの提供 | 今回追加 | 既存 |
3. プロジェクト管理者によるGit連携強化
概要・初心者向け説明
今回のアップデートにより、プロジェクト管理者がワークフローや認証情報の変更を直接Gitリポジトリにコミットできるようになりました。これまでは、インスタンス全体を管理する管理者でなければGitへのコミットができませんでしたが、この変更により、ワークフローを最もよく理解している担当者が、自身の変更を直接バージョン管理できるようになります。
技術的詳細と専門用語解説
n8nの環境機能を通じて、プロジェクトレベルの管理者がGitへのコミット権限を持つことで、ワークフローのデプロイプロセスが大幅に効率化されます。これにより、インスタンスレベルの管理者を介さずに、プロジェクト固有の変更を迅速にバージョン管理システムに反映させることが可能になります。これは、CI/CD（継続的インテグレーション/継続的デリバリー）パイプラインにおける開発・テスト・デプロイのサイクルを加速させ、チーム間のコラボレーションを促進します。
- Gitとは: プログラムのソースコードなどの変更履歴を記録・追跡するための分散型バージョン管理システムです。チーム開発において、コードの変更を管理し、共同作業を効率化するために広く利用されています。
- コミット（Commit）とは: Gitにおいて、変更されたファイルをリポジトリに記録する操作のことです。これにより、変更履歴が保存され、いつでも過去の状態に戻したり、他の変更と統合したりできるようになります。
- CI/CD（Continuous Integration/Continuous Delivery）とは: ソフトウェア開発における一連の自動化されたプロセスで、コードの変更を頻繁に統合（CI）し、テストを経て本番環境に継続的にデプロイ（CD）することで、開発サイクルを高速化し、品質を向上させます。
具体的な活用例・メリット
- 開発効率の向上: ワークフロー開発者が自身の変更を直接コミットできるため、デプロイまでのリードタイムが短縮されます。
- 独立性の確保: 各プロジェクトチームが自身のワークフローのバージョン管理を自律的に行えるようになり、インスタンス管理者への依存度が低下します。
- 品質保証の強化: ワークフローの変更履歴がGitで詳細に管理されるため、問題発生時の原因特定やロールバックが容易になります。
| 項目 | 以前のバージョン | 今回の更新 |
|---|---|---|
| Gitコミット権限 | インスタンス管理者のみ | プロジェクト管理者も可能 |
| ワークフロー展開 | インスタンス管理者経由 | プロジェクト管理者が直接 |
| レビュー体制 | 広範囲の調整が必要 | ワークフロー担当者が直接 |
影響と展望
n8nの今回のリリースは、生成AIワークフローの高度化とエンタープライズ利用の拡大という二つの大きなトレンドに対応するものです。Model Selectorノードは、LLMの選択肢が増え続ける中で、より賢く、よりコスト効率の良いAI活用を可能にし、AIシステムの柔軟性と適応性を飛躍的に向上させます。これにより、企業はAIモデルの進化に迅速に対応し、ビジネス価値を最大化できるようになるでしょう。
また、OIDC SSO対応とGit連携の強化は、n8nが単なる自動化ツールから、企業のITインフラに深く統合されるエンタープライズグレードのプラットフォームへと進化していることを示しています。セキュリティとガバナンスが重視される大規模組織において、n8nの導入と運用がさらに加速することが期待されます。
まとめ
今回のn8n 2025-06-23リリースは、以下の点で特に注目すべきアップデートです。
- Model Selectorノード: 複数のLLMを条件に基づいて動的に選択し、AIワークフローの柔軟性と効率を大幅に向上させます。
- OIDC SSO対応: エンタープライズ向けの認証オプションが拡充され、セキュリティとユーザー管理がより強固に、かつ容易になります。
- Git連携の強化: プロジェクト管理者が直接Gitコミットできるようになり、ワークフローのデプロイとバージョン管理が効率化されます。
- AI活用とエンタープライズ対応: 生成AIの高度な利用と企業インフラへの統合を両面からサポートし、n8nの適用範囲を広げます。
- 開発体験の向上: ワークフローの作成から運用、管理まで、あらゆる側面でユーザー体験が向上します。
これらの新機能は、n8nが未来の自動化とAI統合のハブとしての地位を確固たるものにするでしょう。ぜひ、最新バージョンを試して、その進化を体感してください。
公式リリースノートはこちら: https://docs.n8n.io/release-notes/
