Kiroは、AI開発ワークフローを革新する最新バージョンを2025年12月18日にリリースしました。今回のアップデートでは、複雑なタスクの委譲、計画立案の自動化、高速なファイル検索など、開発者の生産性を飛躍的に向上させる強力な新機能が多数導入されています。本記事では、これらの主要な変更点を初心者から熟練エンジニアまで分かりやすく解説し、KiroがAI開発にもたらす未来を探ります。
主要な変更点：AI開発を次のレベルへ
1. サブエージェントによるタスク委譲と並列実行
概要: Kiroの新しいサブエージェント機能は、複雑なタスクを専門のAIエージェントに委譲し、ライブで進捗を追跡しながら並列で実行することを可能にします。これにより、メインエージェントは全体の指揮に集中しつつ、専門的な作業を効率的に進められます。
初心者向け説明: AIに難しい仕事を頼むとき、まるで「専門家チーム」に仕事を割り振るようなものです。メインのAI（あなたの上司）は全体の指示を出し、細かい専門作業はそれぞれ得意なサブエージェント（専門家）が同時に進めてくれます。これにより、プロジェクトがより早く、正確に進むようになります。
技術的詳細: サブエージェントは、メインエージェントから独立したコンテキスト（思考空間）を持ち、自律的に動作します。これにより、並列タスク実行が可能となり、メインエージェントのコンテキストが散漫になるのを防ぎます。デフォルトの汎用サブエージェントに加え、独自の構成で特定のワークフローに特化したサブエージェントを生成することも可能です。サブエージェントは、ファイル読み書き、シェルコマンド、MCPツールといったコアツールにアクセスできます。既存のエージェント設定でツール制限がある場合は、subagentを許可ツールリストに追加する必要があります。
活用例: 大規模なコードベースにおける複数のモジュールのリファクタリングを同時に実行したり、異なる技術スタックを持つ複数のサブプロジェクトの調査を並行して進めたりする際に絶大な効果を発揮します。
メリット: 開発速度の劇的な向上、メインエージェントの負荷軽減、複雑なプロジェクト管理の簡素化、専門タスクの品質向上。
graph TD
A[メインエージェント] --> B[タスク委譲]
B --> C[サブエージェント1]
B --> D[サブエージェント2]
C --> E[進捗報告]
D --> E[進捗報告]
E --> A
2. Planエージェントによる計画立案の自動化
概要: Planエージェントは、あなたのアイデアを構造化された詳細な実装計画へと自動的に変換する、Kiroに組み込まれた専用エージェントです。
初心者向け説明: 新しいアプリや機能を開発したいけれど、何から手をつけていいか分からない、という経験はありませんか？ Planエージェントは、あなたの漠然としたアイデアを聞き、必要な要件を整理し、コードベースを調べて、具体的な開発手順（設計図）を自動で作成してくれます。まるで、経験豊富なプロジェクトマネージャーが隣にいるかのようです。
技術的詳細: Shift + Tabまたは/planコマンドでアクセスできるPlanエージェントは、以下のワークフローで動作します。
- 要件収集: 構造化された質問と多肢選択肢を通じて、アイデアを具体化します。
- 調査・分析: コードインテリジェンス、新ツールの
grepやglobを活用し、既存のコードベースを深く探索します。 - 実装計画: 明確な目的とデモ説明を含む、詳細なタスク分解計画を生成します。
- ハンドオフ: 承認された計画は、実行を担当するエージェントに引き渡されます。
重要: Planエージェントは読み取り専用モードで動作し、ファイルを変更することはありません。これにより、計画フェーズでの安全性が保証されます。
活用例: 新機能開発の初期設計、既存システムの改善計画、技術的負債の解消計画など、あらゆるプロジェクトの計画立案に活用できます。
メリット: 計画フェーズの高速化と品質向上、開発チーム間の認識統一、手戻りの削減。
graph TD
A[アイデア] --> B[要件収集]
B --> C[調査分析]
C --> D[実装計画]
D --> E[実行エージェント]
3. 高速ファイル検索ツール「grep」と「glob」
概要: Kiroに新たに組み込まれたgrepとglobは、大規模なコードベースから必要な情報やファイルを瞬時に見つけ出すための強力なツールです。
初心者向け説明: プログラムのコードの中から特定のキーワードを探したり、特定の種類のファイル（例えば、すべての画像ファイル）を見つけたりする作業は、これまで少し手間がかかることもありました。Kiroの新しいgrepとglobは、まるでコード専用の超高速な検索エンジンです。探したいものをサッと見つけ出し、あなたの開発作業をスムーズにしてくれます。
技術的詳細:
* grep: 正規表現を用いた高速な内容検索ツールです。.gitignoreファイルを自動で尊重するため、不要なファイルを除外して効率的に検索できます。従来のBashコマンドであるgrep、rg、agの代替として利用できます。
* glob: グロブパターンを用いた高速なファイル発見ツールです。こちらも.gitignoreを尊重し、特定のパターンに合致するファイルを迅速にリストアップします。従来のfindコマンドの代替として設計されています。
両ツールはデフォルトで現在の作業ディレクトリを信頼しますが、エージェント設定でallowedPathsとdeniedPathsを設定することで、検索範囲を細かく制御し、セキュリティを強化できます。
活用例: 特定の関数や変数、APIの呼び出し箇所をコードベース全体から高速に特定したり、特定のファイル形式（例: .tsファイル）をプロジェクト全体から探し出したりする際に非常に有効です。
メリット: 開発者の生産性向上、コードベースの理解促進、デバッグやリファクタリング作業の効率化。
| 項目 | 従来のBashコマンド | Kiroの新ツール |
|---|---|---|
| 内容検索 | grep, rg, ag |
grep |
| ファイル発見 | find |
glob |
| .gitignore | 別途設定必要 | 自動尊重 |
| 速度 | 環境依存 | 高速（組み込み） |
| 信頼性 | 外部コマンド | 組み込み（設定可能） |
4. マルチセッションサポートとMCPレジストリ
概要: 複数のチャットセッションを効率的に管理できる機能と、MCPツール（Modular Component Protocol tools）のガバナンスを強化するMCPレジストリが導入されました。
初心者向け説明:
* マルチセッション: AIとの会話を途中で中断して、別のプロジェクトの会話を始め、また元の会話に戻る、といったことがスムーズにできるようになりました。複数のプロジェクトを同時に進める際にとても便利です。
* MCPレジストリ: 会社やチームでKiroを使う場合、どのAIツールを使っても安全か、どのツールが推奨されるか、といったルールを簡単に設定・管理できるようになりました。これにより、チーム全体のセキュリティと一貫性が保たれます。
技術的詳細:
* マルチセッション: インタラクティブなセッションピッカーを通じて、複数のチャットセッション間を簡単に切り替えることができます。kiro-cli chat --resume-pickerコマンドでCLIから、/chat resumeコマンドでチャット内からピッカーを開けます。kiro-cli chat --list-sessionsで保存されている全セッションを一覧表示できます。セッションはターンごとに自動保存され、セッション名、最終アクティビティ、メッセージプレビューが表示されるため、目的のセッションを素早く見つけられます。
* MCPレジストリ: 組織が利用可能なMCPツールを管理・制御するためのガバナンス機能を提供します。これにより、チーム全体で一貫したツール利用を促進し、セキュリティポリシーを適用することが可能になります。
活用例: 複数の開発プロジェクトを並行して担当するエンジニアが、それぞれのプロジェクトに関するAIとの会話を効率的に管理したり、企業内でAIツールの利用ガイドラインを厳格に適用したりする際に役立ちます。
メリット: ワークフローの柔軟性向上、チーム開発におけるセキュリティと一貫性の確保、生産性の向上。
影響と展望：AI開発の未来を形作るKiro
今回のKiroのリリースは、AI開発のワークフローに大きな変革をもたらすでしょう。サブエージェントによるタスクの並列処理は、大規模プロジェクトにおけるボトルネックを解消し、Planエージェントは開発の初期段階から高品質な計画を保証します。また、高速ファイル検索ツールは開発者の日常的な作業効率を向上させ、マルチセッションとMCPレジストリはチーム開発における利便性とガバナンスを強化します。
Kiroは、AIがAIを開発する「AI駆動開発」のビジョンをさらに現実のものとし、開発者がより創造的で戦略的なタスクに集中できる環境を提供します。今後、Kiroが提供するこれらの機能が業界標準となり、AI開発の速度と品質が飛躍的に向上することが期待されます。
まとめ
Kiroの2025年12月18日リリースは、AI開発の生産性と品質を飛躍的に向上させる画期的なアップデートです。主なポイントは以下の通りです。
- サブエージェント: 複雑なタスクを専門エージェントに委譲し、並列実行することで開発速度を向上させます。
- Planエージェント: アイデアから詳細な実装計画を自動生成し、計画フェーズの効率と品質を高めます。
- 高速ファイル検索:
grepとglobツールにより、コードベース内の情報検索が劇的に高速化されます。 - マルチセッション: 複数のチャットセッションを管理し、異なるプロジェクト間での作業切り替えがスムーズになります。
- MCPレジストリ: MCPツールのガバナンスを強化し、組織全体のセキュリティと一貫性を確保します。
これらの新機能は、AI開発の未来を再定義し、開発者がより効率的かつ創造的に作業できる環境を提供します。
