「Claude Code」の最新バージョン2.0.72が最近リリースされました。今回のアップデートは、AIによるブラウザ操作機能の追加や開発者の生産性向上に直結する多数の改善を含み、初心者からベテランエンジニアまで、すべてのユーザーにとって見逃せない内容となっています。特に、AIとウェブの連携を強化する新機能は、今後の開発ワークフローに大きな影響を与えるでしょう。
主要な変更点

1. AIによるブラウザ直接操作「Claude in Chrome (Beta)」
- 概要: Claude CodeがChromeブラウザと連携し、AIが直接ブラウザを操作できるようになる画期的なベータ機能が追加されました。専用のChrome拡張機能 (https://claude.ai/chrome) と組み合わせることで、Claude Codeのプロンプトからウェブページの閲覧、フォーム入力、情報の抽出などを自動化できます。
- 初心者向け説明: これまでClaude Codeはコードを書いたり、質問に答えたりするのが得意でしたが、今回の機能で「ウェブサイトを開いて、この情報を探してきて」といった具体的な指示を出すと、まるで人間が操作するようにブラウザを動かしてくれるようになります。例えば、最新のニュースを自動で収集したり、オンラインストアで特定の商品を探したりする作業をAIに任せられるイメージです。
- 技術的詳細: この機能は、Claude CodeとChrome拡張機能間のAPI連携を通じて実現されます。AIはユーザーの指示を解釈し、拡張機能を介してブラウザのDOM(Document Object Model)にアクセスし、ナビゲーション、要素のクリック、テキスト入力などの操作を実行します。これにより、ウェブスクレイピング、自動テスト、RPA(Robotic Process Automation)のようなタスクを、より自然言語に近い形でClaude Code内で完結させることが可能になります。
- 活用例・メリット:
- ウェブ調査の自動化: 特定のキーワードで検索し、結果ページから必要な情報を抽出する。
- オンラインフォームの自動入力: 定期的なレポート作成のためのデータ入力作業を効率化。
- ウェブアプリケーションのテスト: 特定のユーザーシナリオに沿ったブラウザ操作を自動実行し、バグを早期発見。
- 開発者は、複雑なウェブ操作をコードで記述する手間を省き、AIに意図を伝えるだけでタスクを完了させられるため、生産性が飛躍的に向上します。
graph TD
A[ユーザーの指示] --> B[Claude Code]
B --> C[Chrome拡張機能]
C --> D[ブラウザ操作実行]
D --> E[ウェブ情報取得]
E --> B
2. ターミナルのちらつき軽減
- 概要・初心者向け説明: Claude Codeに内蔵されているターミナル(コマンドを入力する画面)の表示が、以前よりもスムーズになりました。特に文字の入力や出力が多い際に発生していた画面のちらつきが減り、より快適に作業できるようになります。
- 技術的詳細: ターミナルのレンダリング処理が最適化され、特に高速なテキスト出力や画面更新が必要な場面でのCPU/GPU負荷が軽減されました。これにより、視覚的な安定性が向上し、長時間の作業でも目の疲れを軽減する効果が期待できます。
- メリット: 開発者は、コンパイルログの確認やスクリプト実行結果の監視など、ターミナルを多用する作業において、より集中して取り組めるようになります。
3. モバイルアプリへのQRコード表示
- 概要・初心者向け説明: Claude Codeのデスクトップ版からモバイルアプリをダウンロードする際、画面にQRコードが表示されるようになりました。これをスマートフォンでスキャンするだけで、すぐにアプリストアにアクセスしてダウンロードできるため、手間なくモバイル版を使い始められます。
- メリット: モバイル連携をスムーズにし、ユーザーは場所を選ばずにClaude Codeの機能を利用できるようになります。
4. 会話再開時のローディング表示追加
- 概要・初心者向け説明: 以前の会話を再開する際に、Claudeが情報を読み込んでいる間、画面に「読み込み中」を示すインジケーターが表示されるようになりました。これにより、AIが処理中であることが一目でわかり、ユーザーは待機状態を把握しやすくなります。
- メリット: ユーザー体験が向上し、AIの応答を待つ間の不安や疑問が解消されます。
5. /contextコマンドのシステムプロンプト尊重の修正
- 概要: 非対話モードで
/contextコマンドを使用する際に、カスタムのシステムプロンプトが正しく適用されないバグが修正されました。 - 初心者向け説明: Claudeに「あなたは優秀なプログラマーです」といった役割を指示する設定(システムプロンプト)があるのですが、これまでは自動で動かすときに、その設定を時々忘れてしまうことがありました。今回の修正で、AIは常に指示された役割をきちんと守るようになります。
- 技術的詳細:
/contextコマンドは、AIとのセッションに特定のコンテキスト(文脈)や役割を付与するために使用されます。非対話モード、例えばスクリプトや自動化されたワークフローでこのコマンドを利用する際、指定されたシステムプロンプトが内部的に無視されるケースがありました。この修正により、AIの振る舞いがユーザーの意図通りに一貫して制御されるようになり、特にCI/CDパイプラインや自動テスト環境での信頼性が向上します。 - ※システムプロンプトとは: AIに特定の役割や指示を与えるための初期設定命令。AIの振る舞いを決定する重要な要素です。
- メリット: 自動化された開発プロセスにおいて、AIの予測可能性と信頼性が大幅に向上します。
6. Ctrl+KとCtrl+Yでの連続ペースト順序の修正
- 概要: 連続して
Ctrl+K(行のカット)で複数の行をカットし、Ctrl+Y(ペースト)で貼り付ける際に、行の順序が入れ替わってしまう問題が修正されました。 - 初心者向け説明: コードをコピー&ペーストする際に、複数の行をまとめて移動させると、順番がバラバラになってしまうことがありました。これからは、カットした通りの順番で正確に貼り付けられるようになります。
- 技術的詳細:
Ctrl+KとCtrl+Yは、多くのターミナルエミュレータやエディタで使われる行操作のショートカットです。このバグは、内部的なクリップボード管理やバッファ処理の不整合に起因していたと考えられます。修正により、開発者はより安心してコードの移動や整理を行えるようになり、細かな手作業によるエラーのリスクが減少します。 - メリット: コード編集の効率と正確性が向上し、開発者のストレスを軽減します。
7. @メンションによるファイル提案速度の向上(約3倍高速化)
- 概要:
@を入力してファイルをメンションする際の提案表示速度が、特にGitリポジトリにおいて約3倍高速化されました。 - 初心者向け説明: コードを書いているときに、他のファイルの名前を引用したい場合、
@と入力すると関連するファイル名が候補として表示されます。この候補が表示されるまでの時間が、以前よりもずっと速くなりました。大きなプロジェクトでも、すぐに目的のファイルを見つけられます。 - 技術的詳細: 大規模なGitリポジトリでは、ファイルシステムの走査やインデックス作成に時間がかかり、
@メンションのパフォーマンスが課題でした。今回のアップデートでは、ファイルインデックスのアルゴリズムが最適化され、キャッシュ機構の改善や非同期処理の導入により、提案速度が大幅に向上しました。これにより、開発者はよりスムーズにファイルを参照・挿入できるようになります。 - ※@メンションとは: コードエディタやIDEで、特定のファイルやコードブロックを素早く参照・挿入するための機能。
- メリット: 大規模プロジェクトでの開発効率が劇的に向上し、ファイル探索にかかる時間を削減できます。
8. .ignoreや.rgignoreファイルを持つリポジトリでのファイル提案性能向上
- 概要:
.ignoreや.rgignoreファイルが存在するリポジトリでのファイル提案性能が改善されました。 - 初心者向け説明: プロジェクトには、Gitが無視するファイル(例えば一時ファイルやビルド生成物)を指定する
.ignoreファイルなどがあります。これまでは、これらの無視ファイルが多いと、ファイル提案機能が少し遅くなることがありましたが、今回の改善で、無視ファイルを考慮しつつも素早く提案が表示されるようになりました。 - 技術的詳細:
.ignore(Git用)や.rgignore(Ripgrep用)ファイルは、バージョン管理や検索対象から除外するファイルを定義します。以前は、ファイル提案機能がこれらの無視ルールを効率的に処理できていなかった可能性があります。今回の改善では、ファイル走査時にこれらの無視ルールをより早期かつ効率的に適用することで、不要なファイルのインデックス作成や検索を避け、全体的なパフォーマンスを向上させています。 - メリット: 不要なファイルが提案リストに表示されなくなり、より関連性の高いファイルが素早く提示されるため、開発者の作業効率が向上します。
9. 設定検証エラーの視認性向上
- 概要・初心者向け説明: 設定画面で入力ミスがあった場合など、エラーメッセージがより目立つように改善されました。これにより、どこに問題があるのかがすぐに分かり、設定の修正が容易になります。
- メリット: ユーザーは設定ミスを迅速に特定し、修正できるため、使いやすさが向上します。
10. 「思考中」トグルのショートカット変更(TabからAlt+Tへ)
- 概要: Claude Codeの「思考中」状態を切り替えるトグルキーが、
TabキーからAlt+Tに変更されました。 - 初心者向け説明: Claudeが何かを考えている途中で、その思考を一時停止させたり再開させたりする機能があります。これまでは
Tabキーで切り替えられましたが、Tabキーは普段の入力でよく使うため、意図せず思考を止めてしまうことがありました。新しいAlt+Tは、誤って押すことが少なくなり、より安心して作業できるようになります。 - 技術的詳細:
Tabキーは、コード補完、インデント、フォーカス移動など、開発環境で非常に頻繁に使用されるキーです。このため、「思考中」トグル機能がTabに割り当てられていると、意図しない操作が発生しやすく、開発ワークフローの中断を招く可能性がありました。Alt+Tへの変更は、より意図的な操作を要求することで、偶発的なトグルを防ぎ、ユーザーの作業連続性を保つためのUX改善です。 - メリット: 開発者は、AIの思考プロセスをより意図的に制御できるようになり、誤操作による中断が減少します。
| 項目 | 変更前 (Before) | 変更後 (After) |
|---|---|---|
| ショートカットキー | Tab |
Alt+T |
| 意図しない操作 | 発生しやすい | 発生しにくい |
| 操作性 | 誤操作の可能性あり | 安定性が向上 |
影響と展望
今回のClaude Code 2.0.72のリリースは、生成AIツールの進化における重要な一歩を示しています。特に「Claude in Chrome (Beta)」機能は、AIが単なるテキスト生成ツールから、現実世界のデジタル環境と直接インタラクトするエージェントへと進化する可能性を明確に示しました。これにより、開発者はこれまで手動で行っていたウェブ関連の定型業務をAIに委ねることができ、より創造的で複雑な問題解決に集中できるようになります。
業界全体としては、AIによるRPA(Robotic Process Automation)の領域がさらに拡大し、ノーコード・ローコードツールとの連携も加速するでしょう。また、開発者の生産性向上に直結するファイル提案速度の改善や、ターミナル操作の安定化は、AI開発環境としてのClaude Codeの地位をさらに確固たるものにします。
今後は、AIがブラウザ操作を通じて得た情報を元に、より高度な意思決定や複雑なタスクの自動実行が可能になることが期待されます。例えば、ユーザーの意図を理解し、複数のウェブサービスを横断して情報を統合したり、特定の目標達成のために一連のウェブ操作を自律的に実行したりする未来が現実味を帯びてきます。Claude Codeは、AIと人間の協調作業を次のレベルへと引き上げる、強力なプラットフォームとなるでしょう。
まとめ
Claude Code 2.0.72のリリースは、以下の主要な点でユーザー体験と開発効率を大幅に向上させます。
* AIによるブラウザ操作: 「Claude in Chrome (Beta)」機能により、AIが直接ウェブを操作し、情報収集やタスク自動化が可能に。
* 開発者体験の向上: ターミナルのちらつき軽減、ファイル提案速度の3倍高速化、/contextコマンドの信頼性向上など、日々の開発作業がよりスムーズに。
* ユーザーインターフェースの改善: モバイルアプリへのQRコード、会話再開時のローディング表示、設定エラーの視認性向上など、細部にわたる使いやすさの追求。
* 誤操作の防止: 「思考中」トグルのショートカットキー変更により、意図しない中断を回避し、作業の連続性を確保。
* AIの自律性強化: システムプロンプトの正確な適用やブラウザ連携により、AIがより複雑で信頼性の高いタスクを実行可能に。

