AIに文章の下書きを頼んだとき、文法的には合っているのになぜか読みにくい、いわゆる「AI臭さ」を感じたことはないでしょうか。
いま、そうしたAI特有の不自然な日本語を根本的な文の組み立てからきれいに直してくれるツールとして「yomiyasu(よみやす)」というスキルが注目を集めています。
この記事では、「yomiyasuという名前を聞いたけれど何なのか知りたい」「自分にも関係があるツールなのか確かめたい」という方に向けて、その仕組みや特徴をわかりやすく解説します。
ひとことで言うとどういうもの?
yomiyasuは、AIが作った不自然で読みにくい日本語を、人間がスッと理解できる自然な文章へ書き直すためのスキル(AIに追加する拡張機能のようなもの)です。
身近な例でいうと、「カタカナ語や専門用語ばかりで何を言っているか分からない書類を、要点を崩さずに分かりやすい言葉と主語・述語で整理し直してくれる優秀な編集担当者」のような存在です。
これまでと何が変わるのか、ポイントは次の3点です。
- 表面的な言葉狩りをしない: 「この単語を使ってはダメ」と禁止するのではなく、文の組み立てそのものを直します。
- 「誰が何をするのか」が明確になる: AIがぼかしてしまいがちな主語や具体的な手順をしっかり復元します。
- 機械的なチェックもセットでできる: 余計な太字や箇条書き、不自然な比喩を自動で検査するツールが付属しています。
yomiyasuとは?誰が作った何なのか
yomiyasuは、株式会社ALGO ARTIS(アルゴ・アーティス)に所属する開発者によって開発・公開されたオープンソースの「Agent Skill(エージェント・スキル)」です。
※Agent Skill(エージェント・スキル)とは: AIが特定の仕事(文章の推敲やコードの修正など)をこなすための専用ルールや指示をまとめた追加ファイルのことです。
開発の背景や詳しい設計思想については、Zennの記事「AI-Slopな日本語を構造レベルで読みやすくするSkill『yomiyasu(よみやす)』を作りました」や、公開されているGitHubリポジトリ(nanaism/yomiyasu)で公開されています。
ChatGPTなどの普通のAIと何が違う?
普段使っているChatGPTなどのAIに「もっと自然な日本語にして」「AIっぽい表現をやめて」と頼んだ経験がある方も多いはずです。しかし、そう指示すると次のような問題がよく起こります。
- 「手触り」を「実態」に、「地味に効く」を「効果を発揮する」に変えるなど、単語だけを置き換えて文の骨組みは不自然なまま残る。
- 「自然にして」と頼んだ結果、「真理」「美学」「思想」といった大げさな言葉が増え、ポエムのような文体になってしまう。
Zennの解説記事では、このようにNGワードを指定するだけの「ブラックリスト方式」では文章の根本的な不自然さは直らないと指摘されています。yomiyasuは単語の置き換えではなく、文章の構造そのものを直すルールをAIに与えることで、この問題を解決しようとしています。
なぜいま話題になっているのか?
yomiyasuが話題になっている背景には、AIが書く文章(AI-Slopとも呼ばれます)に対する違和感が、多くの人の間で共通の悩みになってきたことがあります。
※AI-Slop(エーアイ・スロップ)とは: AIが大量生成した、中身が薄く形式ばかり整った質の低い文章やコンテンツのことです。
Qiitaの7万件調査で分かった「AI以後の日本語」
Zennの記事では、逆瀬川ちゃん氏による2026年9月の調査「生成AI以前と以後でエンジニアの文章はどう変わったのか: Qiitaの7万記事を数えてみた話」のデータが紹介されています。これによると、AI普及前後で技術記事の書き方に次のような大きな変化が見られました。
- 太字の頻度: 1,000文字あたり1.26個から3.83個へ約3倍に急増
- 箇条書きの割合: 8.9%から16.4%へ約1.8倍に増加
- ダッシュ記号(—): 1,000文字あたり0.043個から0.426個へ約10倍に激増
- 特定の比喩動詞の増加: 「壊れる」が約16倍、「効く」が約11倍、「実測」が約94倍、「静かに(静かに壊れるなど)」が約49倍に急増
中身を深める代わりに太字や箇条書きで見た目ばかりを飾り立てたり、「静かに壊れる」「安全側に倒す」といった直訳調の比喩動詞が増えたりしている実態が、数字として浮き彫りになりました。
こうした「誰もが感じていた違和感」を言語学的な視点から分析し、具体的な解決策を形にしたことで、技術コミュニティを中心に大きな反響を呼びました。実際にQiitaの比較記事などでも取り上げられ、複数の日本語推敲スキルと比較されるなど盛り上がりを見せています。
仕組みと主な特徴
yomiyasuが具体的にどのように文章を直しているのか、GitHubの公開資料やZennの解説記事をもとに主な特徴を整理します。
1. 「誰が・何を・どうした」を完全に復元する
AIが生成した文章では、「これ」「両者」といった曖昧な言葉が多用されたり、主語が抜けてしまったりすることがよくあります。
yomiyasuは、動作を行う人(開発者、運用者など)やシステムを明確にし、文単体で意味がしっかり伝わる構造へ修復します。また、「保守性担保機能の形骸化の防止。」のようにサ変名詞と助詞「の」を連続させて体言止めにする過剰な名詞化をほどき、自然な述語に戻します。
2. 生物ではない主語とあいまいな比喩動詞を直す
英語の「silently break(静かに壊れる)」「works for(〜に効く)」「land on the safe side(安全側に倒す)」といった表現がそのまま直訳調で日本語に出力されると、文脈が分かりにくくなります。
yomiyasuは、概念や道具があたかも意思を持っているかのような表現を排し、「壊れる」「倒す」「効く」「溶かす」「潰す」といった比喩を、具体的な操作や客観的な状態変化の記述へと書き換えます。
3. 架空の敵を立てる否定対比をやめる
AIはよく「〜ではなく、〜である」「単なる〜ではない」というように、読者が考えてもいない誤解を勝手に持ち出して否定してから本題に入る修辞(レトリック)を使います。yomiyasuは不要な前置きや否定対比を削り、簡潔な肯定文へ再編します。
4. 7つの変換原則とドメイン指定
GitHubリポジトリによると、yomiyasuは以下の「7つの変換原則」に基づいて推敲を行います。
- SVOCMの完全復元: 動作主や曖昧な代名詞を具体的な名詞へ復元する
- 動作主と働きかけの明確化: 要請は「〜してください」、機能は「〜できます」と役割を整理する
- 非生物主語の解体: 道具や概念が意思を持つような表現を客観的な動作へ書き換える
- 比喩動詞の技術的操作化: 「溶かす」「潰す」などを直接的な操作表現へ置き換える
- 不要な前置きと否定対比の肯定化: まわりくどい前置きや二重否定を簡潔な肯定文にする
- 意味保持と不要な情報増補の防止: 原文にない勝手な情報を足さず、制約や数値を保つ
- 呼吸に合った文長と読点・装飾の抑制: 1文を平均30〜45文字、読点を0〜2個に抑え、過剰な太字や絵文字を排除する
また、用途に合わせて「tech(技術記事向け)」「business(業務文書向け)」「essay(エッセイ向け)」という3つのドメイン(分野)を指定して文体を調整することも可能です。
5. AIっぽさを点数化する検査ツールが付属
yomiyasuには、文章内の太字や箇条書きの割合、不自然な比喩、絵文字、文末表現などを機械的にチェックできるPythonスクリプト「yomiyasu_lint.py」が同梱されています。AIによる書き換えだけでなく、ルールに基づいた静的な検査をセットで行えるのが強みです。
他の推敲スキルとの違い
Qiitaの記事「新しい日本語推敲スキル「yomiyasu」がバズっていたので、Claudeで日本語推敲スキル3つを比べてみた」では、yomiyasuと他の代表的な推敲スキル(natural-japanese、japanese-tech-writing)を同じ条件で比較検証しています。
それぞれのスキルの違いは下表のように整理されています。
| スキル名 | 主に直すところ | 仕組み | 修正の傾向 |
|---|---|---|---|
| yomiyasu | 不自然な構文、比喩、装飾 | リライト規則+専用lint | 原文の構成や熱量を残しつつ強すぎる表現や太字を直す |
| natural-japanese | 文体、段落構成、文書全体の設計 | 執筆工程+複数の検査スクリプト | 段落の役割やメッセージ配置から全体を組み直す |
| japanese-tech-writing | 技術文書の論理、冗長さ、読者の負荷 | 詳細な文章規範 | 技術文書として余分な表現を削り論理を詰める |
Qiitaの検証によると、yomiyasuは「文章全体の構成や熱量を大きく崩さず、強すぎる装飾や不自然な比喩だけを普通の言葉へ戻す」という、原文の骨組みを大切にする修正傾向が見られたと報告されています。
自分に関係ある?向いている人と向いていない人
「yomiyasu」という名前を耳にして、自分が使うべきツールなのか気になっている方も多いでしょう。
直接使うのに向いている人
- Claude CodeやCursorなどのAI開発ツールを使っている人: 普段のエディタや開発環境に導入し、
/yomiyasuですぐに下書きを推敲させることができます。 - 技術記事や仕様書、社内レポートを書くエンジニア: AIに下書きを作らせたあとの「手直しにかかる時間」を減らしたい人に適しています。
直接使わなくても恩恵を受ける人
- 企画・営業・マーケティング職などの非エンジニア: 現時点では開発者向けツールを介して動く仕組みですが、今後こうした「AI臭さを抜く構造化の考え方」は、普段利用するAIチャットや文書作成ツールの裏側に組み込まれていく可能性が高いです。また、提示されている「7つの変換原則」自体は、人間が自分で文章を見直す際のチェックリストとしても参考になります。
あまり向いていない人
- 黒い画面(コマンドライン)や開発者向けツールを一切触りたくない人: 後述の通り、現時点ではWebブラウザ上でボタンを1回押せば使えるような単体サービスとしては提供されていません。
- 文章全体の構成やストーリー設計からAIにガラリと作り直してほしい人: yomiyasuは原文の意味や骨組みを保ちながら不自然な表現を直す方針のため、構成全体の再設計を求める場合は別のスキル(natural-japaneseなど)のほうが適している場合があります。
使い方・始め方
※ここからは実際に自分の開発環境に導入して触ってみたい人向けの手順です。使わない方は読み飛ばしても問題ありません。
GitHubリポジトリ(nanaism/yomiyasu)で公開されている導入方法と使い方は以下の通りです。
インストール方法
お使いの環境に合わせて以下のコマンドを実行します。
1. npx skills add を使う場合(推奨)
npx skills add nanaism/yomiyasu
※最新版に更新する場合は npx skills update yomiyasu を実行します。
2. CursorやCodexなどで使う場合(openskills)
npx openskills install nanaism/yomiyasu
npx openskills sync
3. Claude Code プラグインとして使う場合
/plugin marketplace add nanaism/yomiyasu
/plugin install yomiyasu@yomiyasu
4. 手動配置
GitHubのReleasesからyomiyasu.skillをダウンロードし、エージェントのスキルディレクトリに展開して配置します。
基本的な使い方
導入後、AIに対して下書きを貼り付けて次のように指示します。
この文章を読みやすくして。
(ここに修正したい文章を貼り付け)
分野を指定したい場合は、プロンプトに「技術記事向けに」「業務仕様向けに」「エッセイ向けに」と書き添えるか、ドメイン名を指定します。
この文章を技術記事向けに読みやすくして。
(ここに修正したい文章を貼り付け)
付属リンター(検査ツール)の実行
付属のPythonスクリプトを実行することで、MarkdownファイルのAIっぽさをチェックできます。Pythonの標準ライブラリのみで動作します。
# Markdownファイルを検査
python3 scripts/yomiyasu_lint.py README.md
# 警告があれば終了コード1を返す厳格モード(CIやGit用)
python3 scripts/yomiyasu_lint.py article.md --strict
注意点と現時点で分かっていないこと
yomiyasuを利用するにあたって、事前に確認しておくべき注意点と制約があります。
他の日本語校正スキルとの干渉
GitHubリポジトリのドキュメントにおいて、文体調整や校正を目的とした他のスキルが同一環境で同時に有効化されている場合、指示同士が干渉し合って出力がおかしくなるおそれがあると注意喚起されています。使用する際は、類似の日本語校正スキルを一時的に無効化することが推奨されています。
資料からは確認できない点
- Web版サービスの有無: 現時点ではGitHub上でSkillファイルやスクリプトとして配布されているのみで、ブラウザからログインして使えるスタンドアロンのWebアプリ等があるかは資料からは確認できません。
- 商用ライセンスの詳細: GitHub上で公開されていますが、具体的な適用ライセンス条項の詳細はリポジトリ内のLICENSEファイル等を確認する必要があります。
まとめ
yomiyasuの全体像をまとめると、以下のようになります。
- AI臭い文章を文の骨格から直すスキル: 単語の禁止ではなく、主語や述語の関係を正しく戻すことで自然な日本語にします。
- 「静かに壊れる」「効く」などの曖昧な比喩を具体化: 英語の直訳のような表現を、実際の操作や状態変化の言葉に書き換えます。
- 原文の言いたいことを大切にする: 構成や熱量を大きく変えずに、過剰な太字や不自然な言い回しだけを整えます。
- 専用の検査ツールも付属: 自分の書いた文章にどれくらいAIっぽさが含まれているかを機械的に測定できます。
AIを使った文章作成が当たり前になったいま、「AIが作った下書きをいかに素早く、自然で信頼できる文章に仕上げるか」に悩んでいる方にとって、yomiyasuは非常に心強い道具と言えます。
よくある質問
プログラミングができない非エンジニアでも使えますか?
yomiyasu自体はClaude CodeやCursorといった開発者向けのツールで動く拡張機能(スキル)として公開されています。そのため導入には黒い画面(コマンドライン)での操作が必要ですが、ルール自体は「下書きを貼り付けて読みやすくしてもらう」という文章の修正に使われます。
料金はかかりますか? 無料で使えますか?
yomiyasu自体はGitHub上で公開されているオープンソースのスキルであり、無料で入手・利用できます。ただし、これを動かすためのAIツール(Claude CodeやCursorなど)の利用料やAPI利用料は別途発生する場合があります。
ChatGPTや普通のAIに「自然に書いて」と頼むのと何が違いますか?
普通のAIに指示すると、単語を置き換えるだけで文の構造が変わらなかったり、かえって大げさなポエム調になったりしがちです。yomiyasuは「誰が・何を・どうした」という文の骨格を復元し、曖昧な比喩を具体的な動作に直す明確な変換原則を持っています。
yomiyasuを使うときに気をつけるべきことはありますか?
似たような日本語校正スキルが同じ環境で同時に有効化されていると、指示同士が干渉して意図しない出力になるおそれがあります。使う際は他の校正スキルを一時的に無効化することが推奨されています。



