Kiroは2025年12月18日に最新バージョンをリリースしました。この画期的なアップデートは、AI開発ワークフローを劇的に進化させる新機能を多数含んでいます。Web検索機能の統合、高度なフック、並列タスク実行を可能にするサブエージェント、そしてきめ細やかなコードレビュー機能が導入され、初心者から熟練エンジニアまで、あらゆるユーザーの開発効率とコントロールを飛躍的に向上させます。
主要な変更点

Webツールによる情報検索とコンテンツ取得
Kiroの最新リリースでは、インターネットから情報を検索し、URLから直接コンテンツを取得するWebツールが導入されました。これにより、開発者はチャットインターフェースを離れることなく、必要な情報を瞬時に手に入れることができます。
- 初心者向け説明: これまで、AIに何か調べさせたい時は、一度ブラウザを開いて自分で検索し、その結果をAIに伝える必要がありました。しかし、Kiroの新機能を使えば、チャットの中で「〇〇について調べて」と指示するだけで、Kiroが自動的にインターネットを検索し、必要な情報をチャットに表示してくれます。まるで、Kiroがあなたの代わりにWebブラウザを操作してくれるようなものです。
- 技術的詳細: Kiroは、内蔵されたWeb検索機能とコンテンツフェッチ機能を通じて、リアルタイムの情報を取得します。これにより、最新のドキュメント、ライブラリの最新バージョン、あるいは技術的な問題に対する解決策などを、開発ワークフロー内で直接調査することが可能になります。ブラウザへの切り替えが不要になるため、開発の集中力を維持し、効率性を高めます。
- 活用例・メリット:
- 最新情報の取得: 「Pythonの最新バージョンは何ですか?」や「Reactの新しいフックの使い方は?」といった質問に、KiroがWebから最新情報を取得して回答します。
- エラー解決の調査: エラーメッセージを貼り付け、「このエラーの解決策を調べて」と指示すれば、Kiroが関連するフォーラムやドキュメントを検索し、解決策を提案します。
- メリット: 開発環境と情報収集がシームレスに統合され、コンテキストスイッチングのオーバーヘッドが大幅に削減されます。
graph TD
A[ユーザー指示] --> B[Kiro Web検索]
B --> C[情報取得]
C --> D[チャット表示]
強力なフック機能の拡張
Kiroのフック機能が強化され、「Prompt Submit」と「Agent Stop」という2つの新しいトリガーと、新しいアクションタイプが追加されました。これにより、エージェントのワークフローの重要なタイミングで、より柔軟な介入が可能になります。
- 初心者向け説明: 「フック」とは、特定の出来事(例えば、AIに指示を送る前や、AIが作業を終えた時)が起こる直前や直後に、あらかじめ設定しておいた動作を自動的に実行させる仕組みです。今回のアップデートで、AIに指示を送る前や、AIが作業を完全に停止する時にフックが作動するようになりました。これにより、「AIに指示を送る前に、必ずこの情報を確認させておく」とか、「AIが作業を終えたら、自動的にこのコマンドを実行する」といったことが可能になります。
- フック (Hooks) とは: プログラムやシステムにおいて、特定のイベントが発生した際に自動的に実行される処理を差し込むための仕組みです。
- 技術的詳細:
- 新しいトリガー:
Prompt Submit: エージェントにプロンプトが送信される直前に発火。エージェントが行動を起こす前に、追加のコンテキストを注入したり、特定のコマンドを実行したりするのに最適です。Agent Stop: エージェントの実行が完全に停止した際に発火。後処理や結果の検証などに利用できます。
- 新しいアクションタイプ:
Agent Prompt: 自然言語でエージェントに指示を与えます。例えば、特定の情報を確認させたり、作業の方向性を微調整させたりする際に使用します。Shell Command: ローカルでシェルコマンドを実行します。これにより、クレジットを消費することなく、ファイル操作や外部ツールとの連携が可能です。
- 新しいトリガー:
- 活用例・メリット:
- コードレビューの自動化:
Agent Stopフックで、エージェントが生成したコードに対してリンターやフォーマッターをShell Commandで自動実行。 - コンテキストの自動注入:
Prompt Submitフックで、現在のプロジェクトの重要な設定ファイルやガイドラインをAgent Promptでエージェントに自動的に提示し、一貫した開発を促進。 - メリット: ワークフローの自動化がさらに進み、手動での介入を減らしながら、より正確で効率的な開発が可能になります。クレジット消費を抑えつつ、ローカル環境との連携も強化されます。
- コードレビューの自動化:
| 項目 | 以前のフック機能 | 新しいフック機能 |
|---|---|---|
| トリガー | 限定的 | Prompt Submit, Agent Stop を追加 |
| アクション | 限定的 | Agent Prompt (自然言語), Shell Command (ローカル) |
| メリット | 自動化の基礎 | より高度な自動化、クレジット節約、ローカル連携強化 |
並列タスク実行を可能にするサブエージェント
Kiroは、複数のタスクを同時に実行したり、専門的なタスクを特定のサブエージェントに委譲したりできる「サブエージェント」機能を導入しました。これにより、複雑なプロジェクトを効率的に管理し、開発スピードを大幅に向上させることができます。
- 初心者向け説明: これまで、Kiroは一度に一つのタスクを順番にこなしていました。しかし、今回のアップデートで、Kiroは「分身」を作って、複数のタスクを同時に進められるようになりました。例えば、「タスクAとタスクBを同時にやって」と指示すると、Kiroは二つの分身(サブエージェント)を作り、それぞれにタスクAとタスクBを任せます。これにより、全体の作業が早く終わるようになります。また、特定の種類の作業(例えば、プロジェクトの情報を集める作業)に特化した分身も用意されています。
- サブエージェント (Subagents) とは: メインエージェントからタスクを委譲され、並列または専門的に処理を行う独立したAIエージェントです。
- コンテキストウィンドウ (Context Window) とは: AIが一度に処理できる情報の量や範囲を示す概念です。これが大きいほど、より多くの情報を一度に考慮できます。
- 技術的詳細:
- 並列タスク実行: Kiroは、ユーザーの指示に基づいて複数のサブエージェントを起動し、それぞれに異なるタスクを割り当てて同時に実行させることができます。
- 専門化されたサブエージェント:
Context Gatherer: プロジェクト全体を探索し、関連する情報を収集することに特化しています。メインエージェントのコンテキストを汚染することなく、必要な背景情報を効率的に集めます。General-purpose Agent: 一般的なタスクの並列化に使用されます。
- 独立したコンテキストウィンドウ: 各サブエージェントは独自のコンテキストウィンドウを持つため、メインエージェントのコンテキストがクリーンに保たれ、タスク間の干渉が最小限に抑えられます。
- トリガー: 「Use subagents to execute tasks 1 and 2 in parallel」のようなプロンプトで手動でトリガーできるほか、Kiroがタスクの性質に応じて自動的にサブエージェントを活用することもあります。
- 活用例・メリット:
- 大規模プロジェクトの効率化: 「データベースのスキーマ設計とAPIエンドポイントの実装を並行して進めて」と指示し、サブエージェントにそれぞれを任せることで、開発期間を短縮。
- 情報収集と開発の同時進行: メインエージェントがコード生成を行っている間に、サブエージェントが関連するライブラリのドキュメントを収集し、リアルタイムで情報を提供。
- メリット: 複雑なプロジェクトの管理が容易になり、開発の並列化により全体の効率が向上します。メインエージェントの負荷が軽減され、より重要な意思決定に集中できるようになります。
graph TD
A[メインAgent指示] --> B[タスク分割]
B --> C[Subagent1実行]
B --> D[Subagent2実行]
C --> E[結果統合]
D --> E
ファイル単位でのレビューが可能なスーパーバイズドモード
Kiroのスーパーバイズドモードがさらに進化し、コード変更に対するきめ細やかな制御が可能になりました。Kiroが複数のファイルに変更を加える際、開発者は各ファイルを個別にレビューし、変更を承認または拒否できるようになります。
- 初心者向け説明: Kiroがコードを修正する際、これまでは「全部まとめて変更を承認するか、全部まとめて拒否するか」という選択肢しかありませんでした。しかし、今回のアップデートで、Kiroが複数のファイルを変更した場合でも、「このファイルはOKだけど、このファイルはまだ直してほしい」というように、ファイルごとに細かく変更内容を確認し、承認・拒否ができるようになりました。これにより、AIが勝手に意図しない変更をしてしまう心配が減り、より安心してAIに作業を任せられるようになります。
- スーパーバイズドモード (Supervised Mode) とは: AIが提案する変更や行動に対して、ユーザーが逐一確認・承認・拒否できるモードです。AIの自律性を制御し、安全性を高めます。
- 技術的詳細:
- ファイル単位のレビュー: Kiroが複数のファイルにわたる変更を提案した場合、ユーザーは各ファイルの差分を個別に確認し、そのファイルに対する変更のみを承認 (
Accept) または拒否 (Reject) することができます。 - ターンベースのアプローチ: この機能は、
vibe chatセッションとspec chatセッションの両方で利用可能です。AIが変更を提案し、ユーザーがレビューして承認する、というターンベースの対話を通じて、段階的にコードを修正していくことができます。
- ファイル単位のレビュー: Kiroが複数のファイルにわたる変更を提案した場合、ユーザーは各ファイルの差分を個別に確認し、そのファイルに対する変更のみを承認 (
- 活用例・メリット:
- 大規模リファクタリングの安全な実施: Kiroに大規模なリファクタリングを指示した場合でも、影響を受けるファイルを一つずつ確認し、意図しない副作用を防ぎながら安全に変更を適用。
- 学習と制御のバランス: 初心者ユーザーは、AIの提案を細かく確認することで、コードの変更内容を学びながら、同時にAIの行動を完全に制御できます。
- メリット: コード変更に対する透明性と制御が大幅に向上し、AIによる誤った変更のリスクを最小限に抑えながら、開発の生産性を維持できます。
影響と展望
Kiroの今回のアップデートは、AIを活用したソフトウェア開発のパラダイムを大きく変える可能性を秘めています。Webツールによる情報収集の統合は、開発者がIDEやチャット環境から離れることなく、必要な知識にアクセスできる「シングルソース・オブ・トゥルース」を実現します。フック機能の強化は、開発ワークフローの自動化とカスタマイズ性を高め、サブエージェントは複雑なタスクの並列処理と効率的な委譲を可能にし、プロジェクト管理の新たな地平を切り開きます。さらに、スーパーバイズドモードの進化は、AIの自律性と人間の制御のバランスを最適化し、AIとの協調作業における信頼性を向上させます。
これらの機能は、開発者がより創造的な作業に集中できるよう、反復的で時間のかかるタスクをAIに任せることを可能にします。将来的には、Kiroのようなツールが、開発チーム全体の生産性を劇的に向上させ、より複雑で革新的なソフトウェア開発を加速させるでしょう。AIが単なるコード生成ツールではなく、プロジェクトマネージャー、リサーチャー、そして熟練した共同開発者としての役割を果たす未来が、もうすぐそこまで来ています。
まとめ
Kiroの最新バージョンは、AI開発ワークフローに以下の重要な改善をもたらします。
- Webツール統合: チャット内で直接Web検索とコンテンツ取得が可能になり、情報収集がシームレスに。
- フック機能の強化:
Prompt SubmitとAgent Stopトリガー、Agent PromptとShell Commandアクションで、ワークフローの自動化と制御が向上。 - サブエージェント導入: 並列タスク実行と専門タスクの委譲により、複雑なプロジェクトの効率が大幅アップ。
- スーパーバイズドモードの進化: ファイル単位でのコード変更レビューが可能になり、AIの提案に対するきめ細やかな制御と信頼性を確保。
公式リンク: https://kiro.dev/changelog/

